あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ (日経WOMANの本)
「2009年6月あともう少しで育休法改正案が国会で成立するという時に、私は逮捕されました。」
「夫に「たいほ」と3文字だけ打って送信ボタンを押しました。漢字に変換する時間はありませんでした。」
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長であった村木厚子氏が郵便不正事件の被疑者として逮捕された。
女性高級官僚、2児の母を襲ったブラックスワン。
結果として無罪となったものの、当時の部下が不正行為を行ったのは事実の模様。
その責任を164日にも及ぶ拘留生活で果たしたのかもしれない。
本書のタイトルのとおり、あきらめない。勝たなくてもいい、負けなければ。
人生いろいろ、山あり谷あり。
あきらめない...
目頭が熱くなること数度。
<気になったフレーズ>
・目標を低く設定してみる。勝たなくてもいい、負けなければいい
・言語化する必要性 ハローワーク、イクメン
・企画は考えるだけでは出てこない。材料となる経験や知識の蓄積がなければアイデアはうかんでこない (****)
スティーブン・レヴィ: グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
10の100乗を現すGoogolのスペルをラリー・ペイジが誤って登録したのが、Google。
「世界のすべての情報を整理してアクセス可能にする。」ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンはとんでもない目標を掲げて創業した。
ユーザーは捜し物をするために検索するので、広告主にとっては理想的な環境。探している人に売りたいモノをアピールすればいいから。
そこで、アドワーズ、アドセンスは数百億ドルの収益を上げるようになった。
成功のポイントは優秀な人材の採用。それに尽きる。
さらに、二人の創業者の乱暴とも言える偏り...
「たとえ失敗したとしても、完全に失敗することは滅多にない。」
ラリー・ペイジにとって真の意味の失敗は一つしかなく、それは、野心的な課題に挑戦しないことだということ。
彼らには何か計画があるわけではなかった。「研究というのは成果が出るまでいろいろと試し続けるしかない。」
今後個人的にはフェイスブックなどの人間関係構築のツールであるソーシャルメディアとGoogleのアルゴリズムの使い分けになる。
(気になったフレーズ)
・「リンゴとオレンジの問題」:全く次元の異なるモノを比較する
・モンテッソーリ教育
・「規律を知る人間とは、完全に自分の自由意思に沿って行動できる人間のことだ。」
・レイテンシー(latency) 結果が帰ってくるまでの時間
(****)
加藤 嘉一: われ日本海の橋とならん
北京大学の日本人として第一号の国費留学生となり、中国でもっとも有名な日本人と言われているという加藤嘉一氏。
大半の日本人が村社会の中で秩序を重視し、横並び意識の中で国内にて動かずに暮らしていることに警鐘を鳴らす。
そして、若者は日本を出て海外で戦えと主張します。それは、海外へ出て行く人があってもいいでしょう。
この手の主張は一般論としては当然でして、反論する言われもありません。むしろ、日本の将来が危ういから海外へ出ろというコインの裏返的な解決策が安易ではと...そもそも、本当に少子高齢化する日本の将来は暗いのだろうか?(世の中では固定観念化しているが、この手の誹謗中傷は安く買い叩こうとする株や不動産の仲買人がよく使う手だ)
改めて日本がどのような国かを考えてみると、
海に囲まれて、外敵が侵入しづらい環境。元寇を退け、太平洋戦争の際の米軍でさえ、本土上陸を慎重にさせ、北朝鮮も簡単にはやって来れない。また、海に囲まれた環境は地球温暖化には強く、水が豊富で農作物を作るには最適の環境。
さらに、四季のある温帯地域にあって、海のみならず、山、川と自然に恵まれた島国は世界に英国、ニュージーランドと日本しかない。
さらにその恵まれた環境に1億3千人もの単一言語を話すマーケットが。
これだけでも地球上で生きていくためには奇跡的な条件が揃っている。
日本はさらにいい国になる。
GDPすべてといった価値観を捨てて、精神的に豊かで住みやすい国作りを指向すべき。マズロー的に言うと、承認欲求から自己実現へのステップなのかもしれない。
そもそも、日本人はこのすばらしい環境の中で長らく生きてきた結果として香り高いとも言うべき文化を有している。
架け橋になる人も必要だが、架け橋にはもう一つの土台が必要。もう一方の日本をよりよくする人の必要性をより強く感じる。 (***)
小倉 昌男: 「なんでだろう」から仕事は始まる!
運輸省、自治省などと戦いながらクロネコヤマトを築き上げたのが小倉昌男氏。
「荷主さんに惚れ、自分たちが運ばせていただいだく荷物そのものに惚れろ」と指導していたと。
論理性と人柄。その両面から経営者に求められる視点がご自身の経験を元にちりばめられている。
「考えることはいっぱいあるが、大半は二者択一である。」
また、FedExが似たような時期(1971年)に翌日配達のサービスを始めているのもおもしろい符合。調べてみたい。 (****)
浅田 次郎: 霞町物語
「青春の記憶は古い映画のスチールに似ている。
世間の汚濁にまみれてからの名場面は惜しげもなく屑籠に捨ててしまうのに、十八歳の夏の出来事は誰もが立派な額縁に入れて後生大事にしまっている。」
この「夕暮れ隧道」の冒頭の一節にあるように、古いスチール映画のような短編が6編。
明治時代から麻布にある写真館の一家と高校生の青春の一コマ一コマ。
昭和の日本人、高度成長時代の雰囲気はこうだったのか...
生活を気にすることもなく、なんとも自由な雰囲気。
昭和の日本...昭和を懐かしむ時代になってしまったのか。
久し振りに冬の霞町に行ってその雰囲気を味わってみようかな。 (****)
ヤンミ・ムン: ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
本書は感性の差別化。感じる本だ。
キーフレーズ
1.偏りには価値がある。
2.挑発には価値がある。
競合をスタートにその優劣を分析して対処するとみな似たようなものになってしまう。真の差別化は、均整の取れた状態から生じるものではなく、むしろ、偏りから生まれると言う主張には全く同感。だから、他社との比較よりも、その競争からの離脱に焦点をあてる。魅力的なブランドであるほどその本質は骨格だけでは捉えられないほど複雑。
リバースブランドのケースとして
・余分な物が全くないgoogle のホームページ
・格安航空会社だけど、すべての座席がレザーシートで衛星放送が見られるジェットブルー
・シルクドソレイユがサーカスというカテゴリを使っている理由
・「この車が小さすぎないかって?ほらあなたが考えてるよりずっと小さいんですよ。」と小ささを主張するミニクーパー
競争しようとしないアイデアブランドは
・アップル
・ハーレーダビッドソン
・ダブのリアルビューティキャンペーン
筆者の英語名がすごい! Youngme Moon!
(****)
- 図説ドン・キホーテ (1982年)
大判なのでギュスターブ・ドレの絵がきれいに見れる。本文はほんの少々。ふりがなもふってあるので子どもが観るにはいいかもしれない。意味を理解するのは難しいとしても (***)
- トーマス・マン全集〈9〉 (1971年)
小編「ドン・キホーテとともに海を渡る」
トーマス・マンは、1934年ナチスの迫害を逃れてアメリカに渡ります。
その航海の友として持って行ったのが、ドン・キホーテ全4巻でした。
5月19日にフランスのブーローニュにてオランダ船に乗船し、ニュー・アムステルダム(ヨーク)に29日に到着するまでの10日間の航海の様子が描かれています。
タイトルのとおり、ドン・キホーテの引用が多いのですが、中でもムーア人リコーテの話が印象的です。
スペイン国王フィリペⅢ世はユダヤ人、ムーア人などの異人のスペインからの追放を宣言しました。ムーア人であるリコーテは生まれ育ったスペインから追放されてしまうことをドン・キホーテに話し、嘆き悲しんでいるのです。
「よいものの価値はなくしてみて初めてわかる」リコーテは言います。
そして、ドン・キホーテを読んでいるマン自身がそのリコーテと全く同じ境遇だったのです。
時代と追われた国家は違いますが...
自分を真のドイツ人と考え、ドイツを誇りにしてきたトーマス・マンはユダヤ人の血を引いているということで祖国ドイツを追われているのです。
さらに、リコーテは言います。
「私はイタリアからドイツへ向かった。ドイツで一種の平和な境涯を見いだした。なぜというにドイツという国は、善良な落ち着いた国で、その住民は小さな事にくよくよしない。そこでは誰もがそれぞれの思いのままに暮らしている。そして、たいがいの土地では良心の自由を少しも損なわれることなく暮らして行けるからだ」
マンは、自分が追われた祖国ドイツを称賛するリコーテの言葉に誇りを感じると言っています。ドン・キホーテの登場人物の一人に過ぎないのですが...
マンのドイツに対する想いがよくわかります。もしくは、亡命しなくてはならない境遇になってその感が増してきたのかもしれません。
マンが航海の友としたドン・キホーテはリコーテの話を知ってのことだったのでしょうか?
ドン・キホーテのさまざまな逸話のどれかは自分の今の境遇に当てはまっていることでしょう。
(***)
林 良祐: 世界一のトイレ ウォシュレット開発物語 (朝日新書)
「便器とは何か?」「便器ではない便器」「トイレのベンツ」このような現状とは不連続な問題定義が必要なのだろう。商品を売るのではなく、文化を売る。評価を前提として仕事をするのではなく、独自の開発、変貌を遂げなければならない。トイレを汚く早く出たい空間からリラックスできる空間へ変貌させてきた。日本のトイレを世界一にしたのは、ウオッシュレットという機械ではなく、その目的とした文化だった。なにやら茶の世界みたいだ。どの業種も同じだ文化・経験を売れなければ売値はたかがしれている。 (****)
加藤 嘉一: われ日本海の橋とならん
ランナーであり続けると、空気に流され、色に染まることもない。日本人の保守性と秩序をむしろ、横並び意識と看破し、群れから飛び出すことを薦めている。運命の扉を見つけたら、必ずノックしなければならない。運命はあっという間に目の前を通り過ぎて行ってしまう。他人と違う自分とともに、第三者から見た自分という視点は再認識。暇人3億人。失うもののない人は怖い。暇人には時間という財産がある。諦観できる幸せ。面子の流通。危機に際して必要なのは横並び意識ではなく、競争。四川大地震の復興を北京、上海など各都市がそれぞれ担当する都市を持ち、競争して復興に取り組んだという話には度肝を抜かれた。中国社会の競争は日本の数十倍。信号には青(成功)と赤(失敗)しかなく、黄色はない。 (****)
セルバンテスの世界 (SEKAISHISO SEMINAR)
文学の中において登場人物が因果関係なしに謂われない行動を取ることができたのはドン・キホーテが初めてだという。確かに今でも一般的に人が何かを為す際には何らかの動機があると思うものであるが、昔は今以上に宗教、社会規範、風習に縛られていたのであろう。だからこそ、ドン・キホーテの諸行が現代人が見るよりもはるかに突飛なことに見えたのだ。そう意味でドン・キホーテは横並び意識を大きく破壊しようとしたケースかもしれない。 (***)
樋口 正義: 「ドン・キホーテ」事典
題名の通りドン・キホーテの事典。ことわざの章はおもしろいかも (**)
カーマイン・ガロ: スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
プレゼンが中心に書かれているが、Macファンから言わせていただくと、プレゼンがいいから購入しているのではない。Macそのものが当初からクールだったからだ。ジョブズのプレゼンはMacと同じくシンプルで無駄がなく、クールだった。それは、Macとジョブズそのもの。よく考えると物事はすべてシンプルになる。それをジョブズは教えてくれた。プレゼンは付録だ。 (***)
牛島 信明: ドン・キホーテの旅―神に抗う遍歴の騎士 (中公新書)
ドン・キホーテの訳者ならではの解説。キリスト、松尾芭蕉ならびに車寅次郎との比較の視点はなかなかおもしろい。自作自演と世界大劇場。ルネサンスにより、絶対の神の呪縛から逃れられた人間は逆に、個人の存在感に苦しむことになる。ドン・キホーテはその中での少し目立つ俳優に過ぎなかったのかもしれない。個人の多様性が世界大劇場であり、演技が習慣化し、人格を作る。明快に時代背景とドン・キホーテを解説する良書である。 (*****)
ジャン カナヴァジオ: セルバンテス (叢書・ウニベルシタス)
ミゲル・デ・セルバンテス。ドン・キホーテの作者の生き様は作品よりも興味深い。外科医の息子。二度の入牢。イタリアへの渡航。レパントの海戦への参加と勇敢な戦い振り、そして負傷と左腕の喪失。海賊に囚われ、アルジェにおける6年にもおよぶ捕虜生活。そして、無敵艦隊の食料強制徴募係。ドン・キホーテが売れても貧困から脱却できなかった。そんな波瀾万丈の人生の中でユーモアと控えめなアイロニーをちりばめたこの作品を作りだすことの出来たセルバンテスの大きさを感じる。同じ年に死んだシェイクスピアとなんと違うことか。成功とは何であろうか? (****)
ドレの絵で読むドン・キホーテ
抄訳ではあるが、ドレの絵が多数収録されており、それを見ているだけでも楽しい。ドン・キホーテとその登場人物のイメージが出来てしまった。 (****)
ジョーゼフ ボーキン: 巨悪の同盟―ヒトラーとドイツ巨大企業の罪と罰
政治と経済が帝国主義的に結合するとどれだけのことができるか?I・Gファルベンがなければドイツは二回にわたる大戦を戦い抜けなかった。染料を出発点とするドイツ化学工業。赤、黄、藍と次々と合成染料を生み出して世界市場を独占していった。BASF、ヘキスト、バイエル、アグファなど現在でも巨大な化学企業が第一次大戦中に合併した企業I・Gファルベン。その巨大さは計り知れない。BASFにおいてハーバー・ボッシュ法により量産が可能となった窒素肥料と火薬。さらに、コスト高にもかかわらずヒトラーの強力な後押しで開発された人造石油と人造ゴム。しかし、政治的には共産党を嫌ってナチと結びついていく経済界。ハーバーとボッシュが死亡すると急速にナチに取り込まれていく。アウシュビッツにおける合成ゴム工場建設のユダヤ人奴隷労働。ユダヤ人大量殺人に使われた殺虫剤ツィクロンBの生産。国家のため、組織のためには何をしてもよいのだろう。だたし、勝っている間だけという限定付きで (***)
アントワーヌ ヴィトキーヌ: ヒトラー『わが闘争』がたどった数奇な運命
「大衆は大学教授でも外交官でもない。彼らは抽象的な議論について来れないのだ。その一方、感情に訴えれば比較的簡単に心を捉えることができる。それが、大衆の反応を得る秘訣である。」ランツベルクの1年間の服役中にレミントン社のタイプライターで打ち上げた「我が闘争」。ヒトラーは服役中の執筆によって自己の創造性を高めていったのだろう。そして、金持ちになってく。ヒトラーは首相になっても給料を受け取らないことを公約し、それを守った。なぜなら、「我が闘争」の印税は現在の日本円にすると40億円以上の収入があったからだ。有名なベルクホーフ山荘も当時ヒトラー個人が購入したものだ。「我が闘争」の内容自体は同時代の様々な学者などの意見の焼き直しに過ぎなかったという。しかし、それを一冊にまとめて1200万部発行し、結果としてドイツのどの家庭にもあるようにまでしたという。さらに、様々なプロパガンダを利用して何回も同じ事を吹き込んでいった。そして、ナチスの重臣達がヒトラーのご機嫌を取るために競ってその内容の実現を図ったという。おそろしいマニュフェストだった。ヒトラーの演説の能力は広く喧伝されてきたが、書く能力も独裁政治を実現させた原因の一つでもあったということだ。
(****)
グイド クノップ: ヒトラー権力掌握の二〇ヵ月
なぜ、暴力団の親玉のようなヒトラーにドイツは独裁を認めてしまったのだろうか?しかも、合法的に。フランスやロシアの革命とは大きく違う。老齢のヒンデンブルグに承認させた国会議事堂火災緊急令はあらゆる国民の自由を奪うものだった。さまざまな要因はあったにせよ、最大の要素は共産党というナチスより強力な政治勢力の存在ではなかったか。資本家、軍部は共産党に対する恐怖から対抗勢力としてナチスを利用しようとしたのだ。従って皮肉な話だがナチスに政権を取らせ、独裁をさせたのは他ならぬ共産党だった。しかし、資本家、軍部に利用されるほどヒトラーは甘くなかった。彼はその卓越した頭脳(使い方は別にして)とそれを実行する仲間を有していた。仲間の力が無視できない。彼らは本当にためらわずに実行する冷徹な連中だったからだ。 (****)
マクベス (研究社シェイクスピア選集)
女から生まれたものはマクベスを倒せない。バーナムの大森林がダンシネインの高い丘めがけて攻めてこぬ限りマクベスに敗北はあり得ない。この2つの魔女の予言はありえない、あるいは確率が非常に低いと思われることが起こりえるということを言っているように思える。バーナムの大森林はブラックスワンなのか...ハムレットよりマクベスの台詞の方が気が利いている。 (*****)
ハムレット (研究社シェイクスピア選集8)
30年ぶりにシェイクスピアを読み返そうと思っている。おそらく受ける印象が違うはずだ。対訳はありがたい。一粒で二度おいしい。ハムレットは父殺しの確たる証拠がない中で、叔父を殺害する。また、父殺しの可能性が高いと思いながら、その実行に躊躇するというように、あらゆる人が有する矛盾をわかりやすく体現している。私はむしろ、悪役の方に関心があるのだ。なぜ、クローディアスは兄王を殺害したのだろうか?その理由はこの物語の中では明らかにされていない。普通ではないことには理由がある。また、母ガートルードが夫の死後急に義弟と結婚する理由も不可思議だ。この物語はその点を前提に解釈しないと意味がわからない。シェイクスピアの意図はいずこに?クローディアスの独白である"That,as the stars moves not but in his sphere"がその鍵かもしれない。 (*****)
ペーター・ホフマン: ヒトラーとシュタウフェンベルク家 ~「ワルキューレ」に賭けた一族の肖像
伯爵にして、金髪に183センチの長身。文学の造詣が深いこれこそドイツの参謀将校。陸軍大学をクラストップの成績で卒業し、将来の参謀総長とも目されたシュタウフェンベルク大佐。その幼少から家族、宗教、価値観まで詳細な記録。写真も充実している。特に暗殺を予定していた7月15日にヴォルフスシャンツェでヒトラーを迎えるシュタウフェンベルクがヒトラーとともに写っている写真は見事!恵まれた環境に育ったエリートだからこそ実行できた暗殺計画だった。すばらしい記録だ。 (*****)
スティ・ダレヤー: ワルキューレ ヒトラー暗殺の二日間
暗殺未遂事件だけでなく、ヒトラーとその側近のユダヤ人虐殺に至るやりとりなどが書かれている。その指示を受けたヒムラーが泣いて反対していたというのが事実であるとすると意外な事実だ。
デンマーク語の翻訳は難しく、軍事用語の誤訳と思われるのが散見される。
これは映画ワルキューレの原作ではないかもしれない。 (***)
レイモンド・チャンドラー: さよなら、愛しい人
チャンドラーを村上春樹訳で初めて読んだ。結末は想定内のものだったが、ストーリーの展開にはやや粗さを感じた。1940年頃はこんな感じだったのか。ロバート・ミッチャムとシャーロット・ランプリングの映画を見てみたい。映画の方が日本人にはわかりにくい当時の雰囲気を感じさせてくれるかもしれない。 (***)
バーバラ・W・タックマン: 八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)
「英軍ジョン・フレンチ元帥に仏軍ジョッフル元帥は言った「元帥閣下。英国の名誉は失われようとしているのですぞ!」熱を入れて傾聴していたフレンチ卿は、この言葉を聞いて突然顔を赤らめた。数秒の沈黙が流れた。英国軍総司令官の目に涙がにじみ、頬を伝わってこぼれ落ちた。」
タックマンによるマルヌの会戦前の連合軍総帥のやりとりは感動的だ。大きな会戦も一人一人の人間のやりとりによって決まったことがよくわかる。さりげないことが大きく結果を変えるのだ。しかし、砲弾の洗礼を受けない二人よりも、もっと感動的なシーンが第一線ではあったはず。それは、誰も伝えられない...生き残っていないので (****)
渡辺 洋二: 彗星夜襲隊―特攻拒否の異色集団 (光人社NF文庫)
「永遠の0」における芙蓉部隊の美濃部正少佐の話が心に残って、読んでみた。沖縄戦に際して、練習機も含めた総力特攻の方針を掲げる第三航空艦隊の会議において、勇気をもって特攻に反対したのが美濃部正少佐だった。居並ぶ幹部からは空気に押されて反対の声も出ない。あきらめにも似た空気だったという。不思議なことに、結果として芙蓉部隊は特攻から外されて、通常攻撃を許された。身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれというのはこのことだ。高級士官が敵前を逃げていく中で、下級将校と兵だけが特攻で死んでいった。日本が負けた理由はここにあったのではないだろうか。頑強で創意工夫に溢れた下級兵士に対して軍トップは学習を怠り、自らに甘かった。戦陣訓を起草させた東条英機自身が、自殺しそこなったことだけでもそれを充分に現している。現代の日本の政治にも通じるところがある。そのような傾向がある日本では、個々人が独自の判断で動くことが全体の利益に繋がると思われる。空気に負けてはならないのだ。この日本では (***)
杉浦 昭典: 海賊キャプテン・ドレーク イギリスを救った海の英雄 (講談社学術文庫)
この本を読むと「海賊」の概念が変わる。国王から私掠特許状が交付され、国王の軍艦と出資を仰いで他国の財産を強奪していたのである。この歴史を知ると、アングロサクソンの価値観がよくわかる。奪うことがかれらの生きる方法で、分かち合うというアジア的なものとは全く異なる。奪ったものが評価され、女王から爵位を授けられる。また、国王も国家とは別の財産を管理していたわけだ。海賊が発展して東インド会社へ。そしてアジアは国家ぐるみの海賊に身ぐるみはがれていく。きれいな軍服を着た軍人や、品のよい外交官であっても本質は海賊だったのだ。 (***)
マイケル ルイス: アルマダの戦い―スペイン無敵艦隊の悲劇
英国が七つの海の制海権を握った理由が知りたかった。その一つが1588年のスペインの無敵艦隊(アルマダ)との海戦の勝利といわれている。ネルソンのトラファルガーの200年以上も前の話だ。そこで本書を読んでみた。意外だったのは、英西の戦力比が艦の数では互角であったと言う点。無敵艦隊という名にごまかされた感じ。初めて知ったのは、英国が全帆走のガレオン船だけだったのに対して、スペインは櫂走と帆走のハイブリットであるガレアス船がまだ多くを占めており、北海や英仏海峡の荒い海に向いた艦船の構成ではなかった点だ。さらに大砲の射程も英国のカルバリン砲が優位であったが、弾が小さく双方とも砲撃では大きな成果を挙げなかった。では、何が英国を優位にしたかというと、荒い海での帆走の技術と、身近な勝手知ったる海で戦ったことだ。風で走らせるだけでも大変なのに、相手の船と組んで殺し合うのはよっぽどのことだ。 (****)
百田 尚樹: 永遠の0 (ゼロ)
宮部久藏は実在しないが、そのモデル候補は何人かいただろう。フィクションとはいうものの、史実を繊細に追っているので、非常にリアル。さらに、まるでペルシャ絨毯を織り込んでいくような巧みなエピソードの設定。最後にエセックス級空母に見事突入するが、抱いていた250キロ爆弾が不発だったという宮部の死。これには様々な解釈ができるだろう。簡単に感想はまとめることができないが、月並みに表現すると感動した。 (*****)
三島 由紀夫: 獣の戯れ (新潮文庫)
西伊豆が舞台となっていると聞き、読んでみた。由紀夫は安良里にしばらく滞在していたそうだ。小説には安良里は出てこないが、宇久須、黄金埼は出てきていた。図書館から借りた単行本だったが、挿絵が東山魁夷とは恐れ入る。昭和36年ではヨットの話は出てこなかった。 (***)
松永 市郎: 先任将校―軍艦名取短艇隊帰投せり (光人社NF文庫)
1944年8月18日軽巡洋艦名取は米潜水艦の魚雷攻撃によって撃沈される。200名の生存者が先任将校の指揮の下にカッター3隻で300マイル離れたフィリピン諸島を目指した物語。カッターには動力がなく、櫂と帆走で目的地を目指すしかなかった。動力も問題だが、四方海しか見えない状況では方角を決めるのが最も重要なポイント。昼は太陽の位置、夜は星座・星の位置から方角を見定めた。潮流、風の方向も当然重要。結果として13日後にフィリピンミンダナオ島に辿り着く。コンパス、GPSなどを前提とした航海に慣れているが、万一の際はアナログの古典的な知識が必要であることを思い起こさせる。また、極限の状況で200名にも及ぶ兵士達が一致団結したことは、日本兵と指揮官の統率の優秀さを証明するものである。本書の中にも記載されているが、英国バークンヘッド号の逸話に劣らない快挙だと思う。本件は生存者がいたために英雄伝として残っているが、むしろ生存できず、書き残せなかった英雄伝が海には数千とあるのであろう。 (****)
竹内 一正: ハングリーであれ、愚かであれ。―スティーブ・ジョブズ最強脳は不合理に働く
2006年スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチにおける言葉がタイトル。リドリー・スコットが制作したCM「1984」はアップルの経営陣の全員反対した。内容が理解できなかった。しかし、大ヒットしたのだ。ユーザーエクスペリエンスを重視したジョブズ。徹底していた。だからMacはクールなのだ。1997年にはThink DifferentキャンペーンでiMacを発売する。IBMのThinkへの対抗だ。いずれにしても誰にでもできることではないし、運のなせる部分も大きい。でもおもしろい (***)
ジェフリー・S・ヤング: スティーブ・ジョブズ-偶像復活
パラノイアだけが生き残るとはインテルのアンドリュー・グローブの言葉だが、ジョブズもそのまんま!養子、大学の中退、アップルからの追放、ネクストの失敗を経てピクサーの成功。それも他人の功をほとんど横取りした形で。仲間に対する冷たさ。自分とモノのことだけを考えている。しかし、消費者が望むのは経営者の人格ではなく、提供するサービスなのだ。20年来のMacのユーザーとしてその製品・サービスがどのようにして生まれてきたか知ることは楽しい。 (****)
- ローアル アムンセン: 南極点 (朝日文庫)
「我々の目標は極点到達だった。他はすべて副次的だった」
詳細なその記録を辿ると、アムンセンの精神論を越えたプロフェッショナリズムに溢れている。
スコットが雪上車と馬を選択して、最後は人力でソリを引かなければならなかったのに対して、アムンセンは常に犬で人力に頼ることはなかった。
「よく言うように1日のことは、日が沈むまでは誰にもわからない」しかし、彼は目的を絞った上で、分からないことを極小化していった。
「実際、仕事が本当に正しく丹念に実行されることを期待し得る唯一の手段は、そのものを使用する本人がみずからそれをすることだ。」
実務に精通した者だけが確実にそのゴールに達することができる。
(*****)
堀川 哲男: 林則徐―清末の官僚とアヘン戦争 (中公文庫)
秀吉のために死んだ石田三成と道光帝における林則徐の関係は全く違うだろう。林則徐は道光帝のために英国と戦ったわけではない。国益を考えて官僚として自分の能力を試したかった。皇帝の変心も想定内であり、成功を過信していなかった。だからこそ、流刑にも服したし、長生きできた。一方、林則徐を救おうとした王鼎は義憤の上自死してしまう。この生き方の違いは紙一重なのだろうが、興味深い (***)
岡倉 天心: 茶の本 (講談社バイリンガル・ブックス)
この本を読むと老荘思想、禅を学ばなければならなくなる。
「畢竟、我々は万有の中に自分の姿を見るに過ぎない。すなわち、われら特有の性質がわれらの理解方式を定めるのである。」
小堀遠州の逸話。弟子から茶器に関する趣味について、利休の茶器の趣味は千人に一人しか真に分かるものがいなかったのに対して、遠州の趣味は見る人すべてに称賛されているので、遠州は利休に勝っているとお世辞を言われたそうだ。それに対して、遠州は、これはいかにも自分が凡俗であることを証するものだとし、利休は自分だけにおもしろいと思われる物のみ愛好する勇気があった。自分は知らず知らずのうちに一般の人の趣味にこびている。実際、利休は千人に一人の師匠であった。と嘆じたそうだ。
世の中多くの人に受けることを評価の基準に置きがちだが... (*****)
山田 太一: 岸辺のアルバム (光文社文庫)
洪水で流されようとする自宅から真っ先に持ち出したかったのは、子どもの小さい頃の写真を綴じたアルバムだった。写真は幸せな時の記憶をしばらく残す手段。写真の喪失は、想い出の喪失。ある意味では、写真は墓ともいえるかもしれない。 (****)
陳 舜臣: 実録アヘン戦争 (中公文庫)
衰世という語があるとは知らなかった。腐敗沈滞した清国に英国は8千名の兵で勝利した。動機がアヘンの販売であるということはどうでもよい。むしろ、林則徐のような少数派が大胆な行動を取ることによって清国の衰退を決定づけたのは皮肉な結果だ。現状維持政策が最も長生きできる秘訣であることはおもしろくないが事実である。 (***)
角山 栄: 茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書 (596))
日本の茶は生産高と輸出という競争では敗れてしまった。しかし、茶文化という点では世界に希有な存在。日本人として日本の茶を再考してみたい。 (****)
ビアトリス ホーネガー: 茶の世界史―中国の霊薬から世界の飲み物へ
カメリア・シネンシス。紀元前から中国で親しまれてきた茶のことである。コーヒーもお茶もココアもなく、まずい水しかない時代にはヨーロッパではビールかワインを昼間から飲んでいたそうだ。そのわびしさから解放してくれたのが茶だったわけだ。今からでは想像ができない。しかし、その茶は中国と英国の貿易不均衡を引き起こし、英国はアヘンによってその問題を解決した。アヘン戦争で中国を屈服させ、国を瓦解させた。中国が生み出した茶は中国を崩壊に導いたとも言える。様々なエピソードが茶の歴史を彩る。たかが茶。されど茶である。 (****)
R・プラット: 輪切り図鑑 大帆船―トラファルガーの海戦をたたかったイギリスの軍艦の内部を見る
トラファルガーの開戦を戦った英国戦列艦の輪切り。まさに一つの町だ。かくもたくさんの人間が乗船していたとは (****)
- 船と航海 (ビジュアルディクショナリー)
船の構造を古代から学ぶことができる。今とあまり変わっていないと感じる。 (***)
ジャイルズ ミルトン: スパイス戦争―大航海時代の冒険者たち
今となってはなんと言うこともない香辛料である。ナツメグとクローブ。
それが、17世紀に世界において産するのは東インド諸島だけだった。家畜を養う飼料に事欠く冬期には、家畜を処分して塩ずけにして保存しなければならなかった。冷蔵装置のない当時は腐りかけた肉を食べるためには臭い消しの香辛料が不可欠だったという。そこで、ナツメグを巡る血を血で洗うオランダとイギリスの戦いが始まる。アンボイナの虐殺に話は終わるが、彼らは自分たちのためには他人を犠牲にすることを厭わないことを如実に記している。今もおそらく変わってはいない。島国で鎖国していた日本人と、危険を顧みず命をかけて冒険した民族の差は小さくない。
しかし、物語には頻繁に日本人傭兵が出現する。鎖国前には山田長政など多くの日本人が東南アジアに進出していたという事実が垣間見れる。常に内向きよりは外向きであることが必要なのだ (****)
永積 昭: オランダ東インド会社 (講談社学術文庫)
スペインからの独立を果たしたオランダは1602年に東インド会社を設立し、東インド諸島をスペインに勝る過酷さで領有する。日本には1600年に来島するが、その後1640年頃には東インド会社の利益のほとんどが日本との貿易によるものだったという。生糸、織物、鹿皮などを輸入し、銀、銅など地金や貨幣で対価を支払った。ポトシを超える豊富な産出量を誇った日本の銀はほとんどオランダに渡ったのである。その後、英、仏等との戦争ならびに航海条例でオランダは没落していく。しかし、日本、東インド諸島などという極東という遠い地理的な条件下で英仏と長い間対抗し、富を蓄えた歴史はオランダ人の気質を現している。 (***)
エリック ウィリアムズ: 資本主義と奴隷制 (世界歴史叢書)
歴史上の西インド諸島の重要性を再認識。カディス港を出港したヴィルヌーブの仏艦隊が西インド諸島を目指した訳がわかった。船の回転率を上げた三角貿易によって英国は産業革命に必要な資本を蓄積できた。その原動力が奴隷だったとは! (*****)
フランクリン: フランクリン自伝 (中公クラシックス)
13の徳目は全くアメリカ人らしくないように見える。のだが、アメリカ人に限らず、普遍的なものなのだろう。実行するのは簡単ではない。節制、沈黙、規律、決断、節約、勤勉、誠実、正義、中庸、清潔、平静、純潔、謙譲。それぞれの意味は必ずしも日本語のそれではないことに注意が必要。これらの習慣化は即ち従来の自分を捨てることに等しい。勇気がいる。 (****)
浅田 実: イギリス東インド会社とインド成り金 (MINERVA西洋史ライブラリー)
carrying tradeは金利の安い円を買って他の通貨に投資することだと思っていたが、17世紀から彼らはアジアにおいてcarrying tradeを行っていたのだ。当時は「地方港間貿易」がcarrying tradeと言われていた。イギリスのインドにおける覇権が確立する前は、オランダが銀でインドの綿織物を買い込み、モルッカ諸島でその綿織物を香辛料に変えた。また、中国からお茶を買うためにアヘンを買い込んだ。徴税権を得たイギリスは本国から銀を持ち込むことなく、carrying tradeで莫大な利益を上げることができたのだ。要するに本国に何かを持ち帰らないと儲からないということはないのだ。様々な商売はこの「本国」に縛られている。carrying tradeを探すべきだ。 (***)
バーネット: 小公子セドリック
セドリックとドリンコート伯爵は常に心の中にいる。セドリックはあり得ないような善の固まり。子どもの時に読んだのに...忘れていたことを思い出させてくれた。 (****)
R.バックミンスター フラー: クリティカル・パス―宇宙船地球号のデザインサイエンス革命
先に「宇宙船地球号」を読むべきだったか?個人の経験と内面的な知恵を周囲の環境に迎合しないで追求せよ。人ではなく、環境の改革に注力するという点も、人を変えようとして徒労に終わった経験がそうさせているのだろう。60年代から地球環境に着目する穿った見方はさすが。見えすぎていたのかもしれない。太陽は請求書を出さないエネルギー。そもそも、太陽がなければ地球上に生物は存在していない。自然は人のものではなく、人が自然のものなのだ。原子力発電所の問題も、人間の驕りから発生しているに違いない。自然は自然の一部である人間が想定できるはずはないのだ。 (***)
C・サレンバーガー: 機長、究極の決断 (静山社文庫)
サレンバーガー機長でなければ155名の乗客・乗員は助からなかったかもしれない。ハドソン川への着水は誰でも思いついたかもしれない。しかし、それを実行できるか否かは別問題だ。それを実現した彼は、いつまでも空を飛ぶことを夢見ていた11歳のままだったのだ。
のど元にこみ上げてくるものを感ずること数回。
決断も時間との勝負。よい決断もタイミング次第だ。 (*****)
ジャレド・ダイアモンド: 文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
モヤイ像で有名なイースター島の崩壊。その理由は象徴的にも実質的にもそのモヤイ像にあった。美しいはずだった米国モンタナ州、貧困に地震の追い打ちで苦しむハイチ、乾燥したオーストラリアなど環境問題だけでなく、人間の自然との向き合い方を考えさせる内容。ホメオスタシスは自然界にも存在する。不要なものはないというのが真実なのであろう。ダイアモンドは社会が破滅的な判断を下す理由をまとめている。これがおもしろいのだが、人間は人間自身で、ある程度人口調整を行うようにプログラムされているのかもしれない。むしろ、一定の間隔で過ちを犯すことによって、生き残っているのだ。 (*****)
リチャード P. ファインマン: ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
図書館の司書に対して、動物解剖図のことを「猫の地図」をくださいと言ったノーベル物理学賞の受賞者の自伝的エッセイ集。
前提として、世の中を刷新することは難しいと認識している。重要なのは結果ではなく、プロセスと位置づけて、伝聞や実績を盲信することなく、自らやってみる。科学のほとんどは仮説。正しい前提でスタートする方が危うい。電子も仮説。それが実在していれば自然の仕組みを理解する上で便利なだけという。
彼の冒険は釣りに似ているという。一度釣り糸を垂れたら忍耐が重要だというのだ。考えるために酒をやめて、何でも自分でやってみる。女遊びも含めて。縛られず、自由に生きた彼の人生が凝縮している。
ロス・アラモスにおける原爆実験の後におけるロバート・ウィルソンの苦悩のエピソードが生々しい。 (***)
大内 建二: あっと驚く船の話―沈没・漂流・失踪・反乱の記録 (光人社NF文庫)
海難事故のほとんどが、操船者の人為的なミスであることが本書から理解できる。ヨットを趣味とする者にとっては、それは救いであると同時に重い責任でもある。怖いのは慣れからくる驕りだ。しかし、本書の12話の中でも英国バークンヘッド号におけるサトン大佐の話は、忘れられないだろう。普段からの統率がいざという時に発揮されたのだと思う。ひとつひとつの話は掘り下げればタイタニックなみになるのであろう。 (*****)
マルク・レビンソン: コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった
Containerizationは単にコンテナを使った物流を指しているのではない。船、鉄道、トラック、港、倉庫、人をすべて包含した新たなバリューチェンを構成するシステムのこと。箱に入れて運ぶという発想はそんなに難しくはないが、実現は...マルコム・マクリーンの凄さは、周りの歯車に期待しないで、自分でその仕組みをどんどん作ってしまうことろだ。50年経過して初めて革命であったことが認識できる。イノベーションは常にそんなものかもしれない。次の「箱」は何だろう? (*****)
福岡 正信: 自然農法わら一本の革命
「人知、人為は一切無用である。」「ただ生きているだけで、そこに大きな喜びがあるし、幸せがある。」ほとんどが哲学の話。自分がいつの間にか、自然と対決する西洋的な考え方に染まってしまっていたことに気づく。人間は自然に生かされているのだと説く。
自然農法の4原則は、1.不耕起、2.無肥料、3.無農薬、4.無除草という。即ちほとんど自然のまま。しかし、放任ではない。異常の原因はほとんど人間だという。農業はその4原則の反対のことをずっとやってきた。実績のある自然農法が普及しない原因を専門化、高度化によって、全体を理解できる人間がいなくなったためとしている。この辺はバックミンスターの説に近い。さらに、肥料、農耕機械の販売で儲けている農協を中心とする既得権益が阻害している。おもしろい比喩も多数。「麻糸を解くつもりでもつれさせる科学者」「教師は人間のゆがみを直す修繕屋」「狂った医者を直す医学がない」いずれにしても、自然ではない状態は、誰かが意図的に作り出している。何かの目的にために。だから、一度自然に立ち返って考えてみることが必要だと理解した。老子を読みたくなった。 (*****)
落 希一郎: 僕がワイナリーをつくった理由
新潟の人気ワイナリー カーブドッチの軌跡。わずか、200万円の元手からスタートした。本当に好きでなくてはできないことだ。今の仕事が好きか嫌いかという単純なものではないと思う。とにかくやっていることに打ち込むと、このようになるのかもしれない。そこに共同経営者と出資者が集まり、お客様がやってくる。最終的にはワインではなく、その人なのだろう。GWに実際行ってくるつもり。 (****)
成毛 眞: 大人げない大人になれ!
空気に支配される大人たち。我慢していればなんとかなると思っている大人たち。私自身も大人げないことを自覚していたが、時々は大人げがあったりして...臆病なのだろう!半端だったと反省しきり...ポール・アーデンのPLAY・JOBに通じるところ大。日本人からこのような話を聞けるのは楽しい。 (***)
ヴィクター・パパネック: 生きのびるためのデザイン
デザイナー向けの書籍ではない。デザインとはすべての仕事のそれを指している。鱒の例をとって、その流麗なスタイルは自然選択の結果 機能的となったのであり、それが美しく見える。という順番なのだいう。美しくデザインしたから機能的なのではない。少なくとも、美しいスタイルが先にありきではない。また、美的に整えられた環境の重要性をについて。ネズミの実験で多数のネズミを押し込めて、貧しい食事を与えたグループの脳の発達は、ゆとりのある部屋で十分な食事を与えられたネズミに大きく劣っていたこと。太平洋戦争の海兵隊も裕福な家庭に育った兵士の方が、貧しい生活を経た兵士より困難な状況下においてはるかに良く耐えたこと。ネズミにしろ、海兵隊にしても、システム全体を目的の達成に向けて機能的に最小の資源で設計すること、それがよいデザインである。本書は仕事に関する哲学書の色彩が強い。1974年発行であるが、その先見性と不変性は今読んでも違和感がない。 (*****)
ポール ホーケン: 自然資本の経済―「成長の限界」を突破する新産業革命
自然界における多様性の喪失は、大きな災害を引き起こす。トウモロコシや、小麦を広範囲で単一品種で栽培すると、病害や、虫害の天国となる。また、農薬で害虫を殺すと、捕食者(天敵)まで殺してしまう。害虫に農薬に対する耐性ができて、捕食者が農薬でいなくなると最悪の事態。えさとなる害虫が充分にいるから、捕食者が生息でき、害虫は捕食者に捕食されることで個体数の調整がされている。ということはできるだけ自然のままがいいということ。自然資本というコンセプト。生かせる局面が増えるだろう。 (****)
オリ・ブラフマン/ロッド・A・ベックストローム: ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ
ヒトデとクモは似ている。クモは頭を落とすと死んでしまうが、ヒトデは頭がなく、足を切ってもそれぞれがむしろ、増殖していく。クモは集権的組織で、ヒトデはネットワーク型組織。かつては規模が大きいことが競争優位であったが、現在は規模の大きさは必ずしも競争優位のキーファクターではない。音楽業界のケースでは、演奏家が分散型で収入を得ていた時代から、レコード会社が中央集権的に設ける時代を経て、ナップスター、itunesの分散型へ。分散→集権→分散が繰り返されている。注意すべきは、分散型は全体収益が減少することだ。だから、既存の大きくシェアを占めている企業が分散型の選択をする可能性は小さい。集権型の現状維持を狙うだろう。従って、分散への仕掛けは業界外からなされることになる。また、規模の不経済は新規参入コストを劇的に引き下げる。クレイグズリスト、スカイプ、イーペイなどがその実例。インターネットのサークルを通じて何万というニッチマーケットがヒトデに食われていく。 (***)
マルコム グラッドウェル: ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか
ポール・リヴィアの深夜の騎行が米国の独立戦争の火ぶたを切らせた。何かが変わるとき、TippingPointでは彼のような存在が必要。わずかな人間が大きな影響を持つ点は大昔から一緒だったことになる。コネクター、メイヴン、セールスマン、翻訳者。「弱い絆の強さ」は自分の領域以外の人とのつきあいを指しているが、もっともだ。感染的な運動を生み出すためには最初に多くの運動体がたくさん必要。150の法則、交換記憶などおもしろかった。 (***)
ポール・アーデン: PLAY・JOB (プレイ・ジョブ)
PLAY・JOBという言葉自体が一貫した主張になっている。
DO IT,THEN FIX IT AS YOU GO.今アイデアをもっているのであれば、今実行すべきだ。読んでいると飛び込まざるを得なくなる。そんなコピーの行列 (*****)
ピーター メイル: 贅沢の探求 (河出文庫)
数々の贅沢を軽妙なタッチで描いている。しかし、贅沢とはモノよりはサービスであることが、それぞれのテーマごとに明らかにされている。モノはサービスのきっかけに過ぎない。特に、ロンドンのコノートホテルにおけるバーのウエイターの話がその最たるものだ。そのウエイターは、客の喉の渇きをに目を光らせ、発見時にはすばやくそれを癒している。ほとんどそれとはわからない仕草も見逃さないそうだ。酒自体は酒屋でも買えるし、自宅でも飲める。ホテルのバーにいく客が求めているものはバーそのものなのだ。
本書は昼間に読むべきではない。静かな夜一人で読むといいだろう。週末にリラックスするにはいいかもしれない。しかし、自分もやってみようと思うと... (***)
リサ・ ガンスキー: メッシュ すべてのビジネスは〈シェア〉になる
「シェア」を読めばこれは不要かも。
所有のために売れば1回のトランザクションで終わる。シェア、レンタルはトランザクションを連続して繰り返す。
データの価値は加工にある。
シェアするモノは繰り返しの使用に耐え、使い方が簡単でなければならない。広告を出してはダメで、口コミを活用する。オープンになるほど生き残れる。 (**)
ジェームス・H. ハラス: ペリリュー島戦記―珊瑚礁の小島で海兵隊員が見た真実の恐怖 (光人社NF文庫)
米陸軍第81師団の報告書「日本軍守備隊は、祖国のために、全員忠実に戦死せり。」サイパン島喪失後、中川洲男大佐率いる陸軍第14師団第2連隊は米第一海兵師団を壊滅状態におとしめるまで奮闘して全滅した。しかも、それは簡単に万歳突撃のない持久戦の末のこと。本書を読むと精強な第2連隊が近代的な要塞を築いて論理的な戦術をとった事実が確認できる。しかも、常に斬り込み隊が米軍を襲い、米軍の圧倒的な航空戦力、艦砲射撃、戦車を無力化していた。米軍兵士から日本兵がきれいな軍服を着ていると評されていることからも第一級の部隊だったことが窺える。中川大佐は出陣に際して妻からどちらへ?と聞かれて「永劫演習さ」と答えたという。二度と戻れない演習として、そのようにしか伝えられなかった武人だからこそだろう。今日本人が学ぶべきは、感情的な議論ではなく、ペリリューのような戦い方だろう。 (****)
アンソニー・ストー: 孤独―新訳
昔の人々の悩みは貧困、飢餓、天災や病気だった。現代の悩みの多くは人間関係だという。生活環境が自然ではなく、他者(他人)との関係で決定されてくる。無意識ではあるが、自分の位置を相対的にみる習慣が身についてしまっている。しかし、孤独でいられることが能力であるとストーはいう。偉大な芸術家の多くがほとんど精神病にちかい状態にあり、それは他者との関係を最小限(結婚は当然)として自分と対峙したことによって多くの芸術作品や発明が生まれた。
また、想像力は人間だけが有する能力であるが、想像力の発揮は人間が動物として有する生得的な行動パターンから離れることとなり、満足感の減少につながる。想像力は人間を生物としてのありのままの姿に甘んじさせることができなくした。
想像力は孤独の産物。程度の違いがあれ、想像の好きな人間とそうでない人間の価値観は全く異なる。
自分とじっくり向き合ってみるのもいいかもしれない。承認の欲求から自己実現へのステップには孤独が不可欠であろうことは容易に想像できる。 (*****)
ロバート・スペクター: アマゾン・ドット・コム
秘密主義のアマゾンに関する書籍は少ない。1995年7月16日のオープンからわずか15年で世界を席巻した化け物にもかかわらず。著者は記載されている内容のほとんどを内部ではなく、公表されているものから書いていることからもそれは裏付けられる。しかし、これだけの企業が実質的にガレージで創業し、その当初の資本金はわずか1万ドルであったことは起業へのチャンスを感じさせる。
リアル書店の平均35%の返品率を4%に低下させれば、3〜4割のディスカウントは充分にペイするものであると思われる。アマゾンは非効率な流通の習慣を破壊した。
顧客の期待は「お金と時間を節約すること」としてそれに傾注した事業だった。しかし、それでも当初は、Almost just in time という控え目の目標設定であったのだ。 (**)
レイチェル・ボッツマン: シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略
「持つことより使うことにより大きな豊かさがある」とアリストテレスは言ったようだ。所有から使用・経験へ。所有する魅力は捨てがたいが、それをシェアすることによってもっと豊かな生活ができるかもしれないというのだ。それは、まさにパラダイムの変換。豊富なケースとうなずかざるを得ない主張に一方的に押しまくられる。300ページに数回読み直さないと盛り込まれている含意をすくいきれない。 (*****)
ブロートン コバーン: エベレスト―非情の最高峰
ナショナルジオグラフィックのエベレスト撮影隊の記録。ロブ・ホールとスコット・フィッシャー隊の遭難に遭遇。もともとは同隊が1日早く登頂する予定であったが、ホール隊とフィッシャー隊が登ってくるのを見て頂上での渋滞を恐れて登頂を延期した結果助かった。撮影隊だけあって写真が素晴らしいが、ホール隊などの遭難の様子なども詳細に記録されている。美しい記録本だ (****)
ケビン・メイニー(著): トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか
品質と手軽さはトレードオフの関係にあり、どちらかでなければならないとする。大半の商品はそのどちらにも属さない不毛地帯にいるが、その原因は時の流れに乗り遅れたのであろう。売れていたのであるから、過去には何かいいものがあったはず。特に他業種との競争になっていることに気づいていないケースが多いのではないか?
いずれにしても中途半端は最悪だ。
「人々から愛されるか、必要とされない限りビジネスに繁栄はない。」テッド・レオンシスの言葉が心に残る (****)
ジョン・クラカワー: 荒野へ
「空へ」の著者の作品として読んでみた。1992年 クリス・マッカンドレスはアラスカの荒野で餓死した。その死は当時の米国のマスコミを賑わしたらしく、原因は、アラスカの荒野へ乗り込むにあたって必要な準備の不足と無知によるものだとされていた。しかし、クラカワーは、それに異を唱え、食用として認められていたアメリカホドイモのサヤにアルカロイドが含まれており、アルカロイドは糖蛋白の代謝する酵素を抑制することを突き止めた。そのため、何を食べてもそれをエネルギーとして変換することができなくなるというのだ。そして間違いなく餓死する。もともと、食料に苦労していたクリスにアルカロイドは非常に効果的に効いたのである。クリスはそれなりのインテリであり、勉強してアラスカに入っているが、植物学の本にも載っていない毒性についてまでは知らなかった。自然の中で生きようとした本人は自然の力で死んだ。私もアメリカホドイモをネットで調べたが、栄養価の高い食物だとの賞賛はあるが、毒性については何らふれていなかった。考えてみれば、未知のものがあるから「荒野」であり、その魅力にとりつかれてクリスはアラスカで暮らしていた。その死もまさに「荒野」にふさわしいものだったといえる。ここまで事実を突き止めたクラカワーの取材力に感服する。 (****)
池上 正樹: ドキュメントひきこもり 「長期化」と「高年齢化」の実態 (宝島社新書316)
ひきこもりの本人からのレポートは参考になる。原因は様々であり、特定の条件で引きこもる訳ではないということだ。著者はひきこもりの高齢化が進んでいるという。それは当然だろう。ひきこもりも歳をとる。就業後に会社に不適合になる大人がいるのも今に始まったことではない。2010年の豊川市における一家殺人事件の記憶が生々しいが、これは社会現象とは言えない。家庭の問題だ。問題のとらえ方だが、ひきこもりという一本の軸で問題を一般化するのは少し乱暴だ。もっと様々な個別の原因と理由があるはず。家庭における解決を簡単に諦めて、社会(他人)や税金で解決しようとするのはいかがなものか。ますます国民は自己解決能力を失い、他人に依存するようになる。そして、マスコミ、学者と政治家の飯の種に。そして増税?日本の親は自分の役割を果たしていない分だけ子どもに甘く、自立を阻んでいる。安易に社会保障に結びつけるのはどうかと思う。自分の子どものことは自分でなんとかする。それが親の責任ではないか。 (**)
松浦 晋也: スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~
2回の事故を経て引退したスペースシャトル。1986年1月、チャレンジャーは固体ロケットブースターのつなぎ目のOリングが低い気温のために十分に機能しなかった。固体ロケットブースターの制作会社であるサイコアール社が打ち上げに反対したにもかかわらず、打ち上げは強行され、そして打ち上げ後73秒でチャレンジャーは爆発し、7名の搭乗員は全員死亡した。2003年2月、コロンビアは発射時に剥離したロケットの断熱材が、シャトルの翼にあたり、損傷させた。大気圏再突入に当たって翼が耐えられず空中分解した。ロケットの断熱材の剥離は従来からも知られていたが、事故が発生していなかったため、顧みられなかった。NASAの政治的な立場の問題もあげられていたが、根本的にはシャトルの基本的なコンセプトに問題があった。「翼」は宇宙には不要だったということだ。しかし、走り始めたプロジェクトは止められない。サンクコストの大きなスペースシャトルだった (***)
ケリー テイラー=ルイス: シャクルトンに消された男たち―南極横断隊の悲劇
シャクルトンの栄光の陰に隠れて3名を失ったロス支隊。歴史に出てこなかった大英帝国南極横断隊の裏面を赤裸々に綴っている。おそらく、シャクルトンはロス支隊がなくてもなんとか横断の目的を達っするつもりだったのではないか。でないとロス支隊の準備不足の説明がつかない。 (****)
- 兵東 政夫: 歩兵第十八聯隊史 (1964年)
陸軍第18連隊は三河出身者を中心に構成され、豊橋に連隊本部を置いた。「太平洋の奇蹟」の主人公である大場栄大尉は18連隊の所属であった。本書は第18連隊の発足からサイパン、グァムにおける玉砕までの詳細な歴史。検索してみると連隊史として出版されている書籍は少ない。明治時代からの資料の収集と構成の苦労は大変なものであったことだろう。国のために戦った歴史は残さなければならない。日本人にとって貴重な歴史 (***)
ドン・ジョーンズ: タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語 (祥伝社黄金文庫)
映画「太平洋の奇蹟」の原作。大場栄大尉のことを初めて知った。著者は日本の戦後生まれの世代が戦争を恥じる感覚を持っており、その原因は事実にもとづいたものではなく、知識の欠如にあるとしている。戦後生まれの世代が国を守るために戦った父や祖父に対して何らの尊敬の念を払っていないことに驚いている。日本の兵隊はよく戦った。世界中でもっとも優れた戦士だったという。日本兵と戦った米軍人がそう言っているのだから。恥を誇りに変えていくのはあくまでも歴史の事実なのだ。 (****)
ジェニファー アームストロング: そして、奇跡は起こった!―シャクルトン隊、全員生還
シャクルトンのリーダーシップもさることながら、メンバーの人選が大きい。以下の募集文書で集まった5千人の中から選りすぐったのだ。「冒険に行きたい男子を求む。収入少。極寒。全く太陽を見ない日々が数ヶ月続く。危険が多く、生還の保証はない。成功した場合のみ、名誉と賞賛を得る。」英国帰還後ヒーローとなったシャクルトンだったが、彼がいう彼への最大の賛辞は、エレファント島に残された22名の隊員を救出した際に隊員から言われれた「ボス、あなたなら戻ってきてくれると信じていました。」だった。シャクルトンのマネはできない。極限の状態におけるハーレーの写真の数々が貴重だ。 (*****)
A チェリー=ガラード: 世界最悪の旅 (地球人ライブラリー)
スコットの遺書は感動的。「偉大な探検家であることの証明はしそこなうでしょうが、これまでにない壮大な行進をなしとげ、大成功の一歩手前までは来たのです。」「私たちは危険を冒しました。それも、すべてを承知の上、覚悟の上での冒険だったのです。結果は裏目にでましたが、私たちが文句を言う筋合いではありません。」 (***)
- 本多 勝一: アムンセンとスコット―南極点への到達に賭ける
アムンセンとスコット双方の立場から書かれているが、どちらかというとアムンセン寄り。個人的には勝ち負けは関係ないと思うが、パラノイア的なアムンセンにはスコットのみならず、誰でもかなわなかったのだと思う。アムンセンは子どものときから極地探検を目指していた。寒さに耐える体を作るために冬でも窓を開けた部屋の中で裸で過ごしたり、遠征隊の隊長は自由度を持つために、船長を兼務しなければならないと考えて3年間も航海したり。なんと言っても、子どものころからの生粋の探検家であったということだ。パラノイアでないと生き残れないというのは本当かもしれない。しんどいことだが‥‥‥ (****)
ジョン クラカワー: 空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか
遭難したエベレスト登山隊に参加したジャーナリストの作品なので、伝聞のドキュメンタリーではないところが特別。
サンクコストを理解する好例。のめり込めばのめり込むだけ冷静な判断がしにくくなっていく。 (*****)
マイケル・A・ロベルト: 決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント (ウォートン経営戦略シリーズ)
重要なのは答えではなく質問である。
正しい決定をするために、必要なのは「正しい解決策(What)」の発見ではなく、「正しいプロセス(How)」の設定だと説く。そして、「助言はあまねく、命令は一つ」
認知的対立と感情的対立の関係
意思決定の4C
Composition(メンバー構成)、Context(背景・ルールの設定)、Communication(意見・情報交換、選択肢の評価の方法)、Control(リーダーの立場の明確化)
「経営者が意思決定において過ちを犯す最もありふれた原因は、正しい質問ではなく、正しい答えを見つけることに重きを置くことである。」ドラッカー (****)
- ゲーリー・ヘクター: 巨大銀行の崩壊 バンカメリカはなぜ衰退したのか
バンク・アメリカの創業とその後の浮沈の歴史。A・P・ジアニーニが創業したバンク・オブ・イタリーはサンフランシスコの大地震を契機に大きく発展した。本書が描く経営者とその取り巻きの詳細な描写に驚く。誰にどのように取材したのか。しかし、それを一方的に信じるつもりにはなれない。バンク・アメリカとの接点は遠い日本にいてもバンカメカードの末裔のVISAカードの所有である。それだけでもジアニーニの偉大さはわかるというものだ。 (***)
松原 泰道: 一日一生五十歳からの人生百歳プラン (講談社プラスアルファ新書)
百冊の乱読にまさるこの一冊
現在を充実して生きるほか充実した人生はないという一日一生を仏典と種々の古典から紐解いている。簡単に読み過ごせない。
「今・ここ・自分」の三位一体
流行こそ不易の本体 松尾芭蕉
石垣
「風車 風が吹くまで 昼寝かな」 広田弘毅
丹精
「稽古とは 一より習い十を知り 十よりかえるもとのその一」千利休
「信曰く、兵法に曰わずや、「死地に陥りて而る後に生き、亡地に置きて而る後に存す」韓信
「この秋は 雨か嵐か知らねども 今日のつとめに 田草とるなり」二宮尊徳
(*****)
鈴木 亘: 社会保障の「不都合な真実」
シンガポールの医療積立口座が紹介されている。これは、給与から治療の費用として強制的に国民に貯蓄をさせるもの。非課税であり、国がある程度の金利をつける。剰余分は自分で使えるようにしてある。積立方式かつ診療の抑制にもつながっているのでおもしろい制度だと思う。医療保険は民間の保険との棲み分けもそろそろ考えてもよいのではないかと思う。 (****)
ジェームズ・C・コリンズ(James C. Collins): ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階
社会にとって存在が不可欠な企業であり続けることができれば衰退することはない。本書はそもそもビジョナリーカンパニーの衰退を扱っているのでレベルの高い話。存在が不可欠な要素は時とともに変化していく。だからこそ、偉大な業績の継続は困難だ。従ってユニクロの柳井さんが主張されるようなプロジェクト型組織の存在も理論的には考えられる。プロジェクトが終了すればいつでも解散するなんて。盛者必衰は国も企業も当然。それを防止するという発想ではなく、新しいプロジェクトの創造の継続というコンセプト。つまり主体が変容し続けるとう考え方の方が新鮮だ。
はたしてコリンズ教授は前2作にこれを加える必要があったのだろうか?前2作がすばらしかっただけに‥‥‥ (**)
斎藤 隆介: 花さき山 (ものがたり絵本 20)
些細なことでもいいことをすると山に花が咲く。いいことをする時は刹那的に自分が損をすると思えるものだ。しかし、自分の心の中に花が一本づつ増えていくそんなイメージをもてば、短期的な自分の犠牲を乗り越えて大きな花を咲かせることができる。こども向けの絵本だが、大人になってもその境地に至っていない自分を恥じる。 (***)
天台宗大阿闍梨 酒井 雄哉: 一日一生 (朝日新書)
一日が一生。だから、今日失敗したからと言って落ち込む必要はない。明日はまた新しい人生が始まるのだから。シンプルでわかりやすい。内村鑑三も同じタイトルの本を出しているのでそちらも読んでみよう。 (****)
石 弘光: 消費税の政治経済学
元政府税調会長であった著者の解説は消費税以外の税体系も含めて非常にわかりやすい。本書の内容とは離れるが、読了して思うのは、税が先ではなく、国のグランドデザインが先であるということだ。個人の自助努力が自由主義国家の基本であって、個人の努力の及ばないところを国が代替する。そのコストを税という形式で国民が負担する。揺りかごから墓場までといった労働党政権が英国をどんな状態にしたかは歴史が証明している。国は個人の自助努力をサポートする方向で存在すればいいのである。国家のグランドデザインのない中での税収の検討はまさに砂上の楼閣。税のあり方が問題ではないのだ。 (****)
藤森 克彦: 単身急増社会の衝撃
単身世帯が16%もあったとは驚きだ。著者はそれを社会のセーフティネットで救うべきと主張する。その根拠は社会保険料・税負担が日本は外国比でまだ低いためという?どうして他人のマネをしなければならないのかの説明がない。他国が滅びれば日本も滅びてもよいというのだろうか?そもそも動物の世界で婚姻があるのは人間だけ。弱い生物は子孫を残せない。それが自然選択の摂理。単身だから生きにくいという理由はない。セーフティネットは最小限の保険でなければならない。過保護は守られるべき人をも弱くする。延いては社会を弱くして、弱者を守る力のない世の中にしてしまう。国民全員が評論家になっては困る。 (**)
出口 治明: 生命保険入門 新版
本書で書かれている「生命保険とのつきあい方」を著者が社長であるライフネット生命で実現している。保険に携わる人のみならず、これから保険を考えようとしている人も本書を読んでから検討した方がよいかもしれない。必要なデータが丁寧に掲載されている。 (*****)
ベノワ・B・マンデルブロ: 禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン
難しい内容だった。半分も理解できていない。この内容を理解するには何か他の情報が必要なのだろう。フラクタルの提唱者であるマンデルブロは古典的なランダムウォーク理論の3点のうち2つを否定する。第一はリスクの独立性。第二は正規分布。これを否定されるとリスクは計算できないことになる。保険会社はお手上げだ。大数の法則はどこへ行くのか?いかにも具体的に示されるデータは事象はマンデルブロの主張を補強している。しかし、フラクタルは価格の予想は諦めており、ボラティリティの把握だけができるとしているが、それは大変動への予測でしかない。しかし、9.11やスマトラ島の大地震のような損害をどのように想定して回避するのかということについての解はない。少なくとも、ファットテールには予測可能性はないため、収益もしくは損害を想定済みであると思い込むのが危険であることはわかる。しかし、それは確率以前の時代に戻るのとさほど違いがないような気もする。 (*****)
ポール ケネディ: 決定版 大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争〈上巻〉
地政学的なポジションと時系列なパワーの盛衰が他国との相対的な力関係と相まって複雑な国際関係を産み出す。国力の増減と国際関係に一般法則はないが、持った金と力(軍事力)は使いたくなり、使うとそれを失う。その繰り返しのように見える。盛者必衰の理をあらわすか...
本書は5世紀間の世界の流れを追っているので、深い原因や相関を知ろうとするとがっかりする。アウトラインをおさえると考えて読んだ方がよい (**)
スティーヴン・レヴィット: ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
関心のある社会現象について仮説を決めてそれにあったデータを探し、当てはめる。そこまでは当たり前だが、それを今までと違った基準で考えてみる。犯罪の減少の原因が人口妊娠中絶によるものだとしているが、どうしてその相関に気づいたのか?相撲の八百長に関しても力士の番付の仕組みを研究し、7勝7敗の力士とその対戦成績を継続的に調べた結果だ。すべてはインセンティブから始まっている。経済的、社会的、道徳的3つのインセンティブというのもうなづける (****)
猪瀬 直樹: 日本人はなぜ戦争をしたか―昭和16年夏の敗戦 (日本の近代 猪瀬直樹著作集)
企画院とは別に総力戦研究所を作った昭和16年。もともと、敵の死命を制する手段(米本土の占領)を持たない日本はどう計算しても勝てるはずがなかった。天皇もそれを知りながら止められない。本書の主張は計算してもしなくても変わらない行動があるということ。そもそも、ケンカは勝負を見越してするものではないだろう。空気の違い。話してもわからない間合いがよくわかる。戦陣訓を書いた東条英機が自決しない理由も複雑だ。後知恵で知らない人間がわかり得ない空気を感じさせる。 (***)
マーガレット サッチャー: サッチャー回顧録―ダウニング街の日々〈下〉
鉄の女サッチャー。その通り、彼女は信念と実行の首相だった。国営企業民営化、社会保険、公共事業などの歳出削減、公務員制度改革、労働組合改革、防衛費増強など今の日本が取り組むべき課題を30年前から徹底して実行した。ウィンブルドン現象などという言葉も出来たが、その実行は徹底した議論からスタートしていた。英国の凋落を追うように日本の凋落も加速化している。彼女のようなリーダーを選ばなければならない。 (**)
宋 文洲: 仕事ができない人は話も長い
宋さんのメールマガジンの集成版。タイトルはその中の一稿であって全体を現すものではない。宋さんの人間力が垣間見れる内容。「差」がエネルギーを生む話。電流、風、利益。それぞれ電圧、気圧、売り上げと原価の「差」であるという。「差」はハングリー精神の源。そうか、意図的に「差」を作り出していけばいいのか‥‥‥
「完璧」は開拓と革新を阻害する言葉。なるほど。「完璧」の代償に早く気づくべきというのはその通りだ。
毎日一篇づつ読んでいきたい本だ。 (****)
宋 文洲: 努力しているヒマはない!―新しい時代の生き方、働き方
宋さんのtwitterが示唆に富んでいるため読んでみた。努力とは奴隷の力!まさに文字通り。運・不運が人生を決める!ランダムネス。だからたくさんのチャンスに会えるように自ら動く!根底にはマズローの5段階めの自己実現の認識が必要となるだろう。成功した宋さんがランダムネスを語るところがさすがだ。 (****)
マーク ブキャナン: 人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動
自己組織化とフィードバックがパターンを生む。人を社会の原子とする自然科学から社会科学へのアプローチは目から鱗。人間の脳の働きを限定的に理解し、模倣、協調の影響にクローズアップした。パターンの形成に着目することの重要性に気づかせてくれた。おそらく「流行」と同義なのだろう。それが意図的ではなく、自然に形成される点がどう違うのか? (*****)
M.ミッチェル ワールドロップ: 複雑系―生命現象から政治、経済までを統合する知の革命
米国の民間施設であるサンタフェ研究所の物語。こんな研究所が民間レベルで存在するのが米国の強さ。
カウフマンの自動触媒セットの話がおもしろい。複雑さがある閾値を超えると相転移が期待できる。従ってその閾値に達しない単純な経済社会の場合はイノベーションが起こらない。バナナしか生産しない国はバナナが増える以上の発展はない。個人の能力も同じなのだろう。鍋にいろいろな材料を投げ入れて長い間かき混ぜる必要がある。
ひとつひとつの話は興味深いが複雑系の全体像を本書に求めるとがっかりする。 (***)
マーク・ブキャナン: 歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
ブラック・スワンから物事の見方が変わってきたが、歴史的にみると複雑系は外せない。地球上における度重なる生物の絶滅の話を読んでいると我々がいかに微妙なバランスの上に生きているかを思い知らされる。リスクのスケールのとらえ方が違う。ランダムネスは勇気を与える指針だと思う。 (*****)
レナード・ムロディナウ: たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する
世の中のランダムネスを確率論の基本からわかりやすく解説している。両親ともにナチスの収容所から奇跡的に生還したユダヤ人。ランダムネスの裏付けとして自己の出生の経緯も書かれている。結果で人を判断するリスクはあるだろう。だから成功していない人にチャンスがあるかもしれない。しかし、それはあくまでも可能性であり、かつそれがいつ到来するかもわからないのだが。むしろ、だからこそリスクテイクが重要となってくるという論理展開なのだ。納得できる。 (****)
沼澤 茂美: 星空ウォッチング
星と星座の見方をやさしく教えてくれる。星座がギリシャ神話から来ていることを改めて知った。古代の人々は実利的な暦と神々の存在を輝く星に託したのであろう。暗い夜空に輝く星がまさに救いだったのだ。暗ければ暗いほど明るく多く見える星々に引き寄せられる魔力のようなものを感じる (***)
トーマス・クーン: コペルニクス革命 (講談社学術文庫)
いつも使っているモノは前提として思考に組み込まれているために、その前提から抜け出すことは難しい。
私には難解な本だったが、星への興味が目覚めた。
アリステレス、プトレマイオスの時代から、地球と天球の2球説であって、コロンブスなどが航海に出る前提として地球が四角形やフラットであるとは考えられていなかった。彼らが出港したのはコペルニクスが地動説を発表する前だったが、しっかりと勉強していたのだろう。
しかし、ルネサンスに至るまでの欧州は暗黒の中世の時代であり、かってのギリシャ文化は失われていた。そして、アラビア語化されたプトレマイオスなどをラテン語に翻訳し、それを勉強して学術に目覚めたという。まさに温故知新だったということだ。
進んだパラダイムはいとも簡単に忘却され、時の都合によって排除されてしまう。キリスト教が自分に都合の悪い事実の受け入れを拒んだ歴史がそれを物語っている。
万人における真実というものがないとすると、それは個々人の趣味嗜好の一部分というしかないだろう。その真実が自分にとって都合がよいか否かがポイントなのだ。よって、自分に都合の悪い新たなパラダイムの場合にはそれを受け入れざるを得なくなるまで数百年かかるケースもある。
今までと違うことをやることがいかに人間の世界で難しいかあらためて考えさせられた
簡単には変えられないのだ。 (***)
トーマス・クーン: 科学革命の構造
パラダイムという言葉を作り出したクーンだが、難しい。アナロジーとアノマリーへの注目はこの時代から言われていたことになる。しかし、新しいことは理解され、使用されるまでに恐ろしく時間がかかることがわかった。死んでから評価されるのが普通だということだ。 (**)
ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)
トロイアが現在のトルコ西岸にあるとすると、航海の困難さは想像に絶する。その困難を神の存在に依拠したのはさほど不自然ではない。知らないことは神の問題だったのか。しかし、意外とその方が気楽だったのかもしれない。起こったことは全部自分の責任と考えるよりは (***)
モートン マイヤーズ: セレンディピティと近代医学―独創、偶然、発見の100年
フレミングによるペニシリンの発見は7つの偶然が重ならなければなかったと言われている。さらに、フローリーが実用化しなければ、その発見も無になってしまうはずだった。セレンディピティは医学の世界でも常識だった。しかし、たまたまはすべての人に平等にあるわけではない。パスツールは「チャンスはよく準備された心にのみ微笑む」と言ったらしい。
アナロジー(類似性)とアノマリー(異常性)に注意だ。 (****)
トーマス・ヘイガー: 大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀
植物が育つための窒素の重要性と空気からその重要な資源を作り出したハーバーとボッシュの物語。両大戦の狭間で戦争への協力をしなから自らの事業の資金を国家から提供させた。窒素と火薬は硝酸をキーとして製造に類似性があるらしい。戦争に窒素の製造も不可欠であったわけだ。さらに、ボッシュは石炭から人造ガソリンまで作り出して油田のないドイツの継戦能力を飛躍的に高めた。
まさに、化学という文字通り何でも化けさせてしまう錬金術師。知識としても物語としても第一級。 (*****)
ホメロス: イリアス〈上〉 (岩波文庫)
タレブがタイプライターの前にすわる無限大の猿はイーリアスを書き上げると書いていたが、その意味がわかる気がした。長いのだ。
実に人間的な神々の戦いを書いたホメロスは神を創造しているかも。神も誰かが創造したということか! (**)
リチャード・セイラー: 実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択
少し選択肢が多すぎるような気がする。即ち、著者が述べているように適切な選択には簡素化された選択肢とデフォルトの設定が必要なのだ。本書は選択肢が多すぎる。もう少し、周辺から理解を試みたい (***)
ダニエル・ピンク: ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
左脳の時代から右脳中心のハイコンセプト&ハイタッチの時代に。左脳でできる仕事の多くが、コンピュータや開発途上国の人々に取られてしまうからだ。ベースはフリードマンの「フラット化する世界」に似ている。右脳、左脳の機能からスタートしている点がユニーク。
今後求められる6つのセンス。「機能よりデザイン」「議論よりは物語」「個別よりは全体の調和」「論理ではなく共感」「まじめだけでなく遊び心」「モノよりも生きがい」そのとおりだと思う (****)
ボブ ウィーランド: 腕で歩く
ボブ・ウィーランドを初めて知ったのは、MDRTのアナハイム大会における講演のビデオだった。誰にもできないことは何もないと思わせるすばらしい講演だった。本書の内容はほぼそれと同じ。しかし、映像と本人の肉声にはかなわない。スーパーマンだ。 (***)
- サム ウォルトン: ロープライスエブリデイ
Think Smallを標榜したウォルトンは中小の小売業者の対抗策について次のように述べている。
これはまさにコンピュータ以前のCRMであり、商売の基本なのである。
「顧客とのちょっとしたふれあいは自営業者にとって非常に大事なものなのだ。なぜならウォルマートがいくらがんばってもマネのできないことだからだ。」「彼らが品揃えを的確に行い、販売員には商品知識とその使用方法を十分に教育し、顧客との対応に配慮すれば、私たちには全く対応できない。」 (**)
ウィリアム ポラード: 企業のすべては人に始まる―サービスマスター・社員の成長に献身する会社
企業文化の存在によって経営の目指す方向に組織を持って行くことができる。企業文化がなければ、社長といえども大きな船をコントロールすることは難しい。それは個々の顧客にサービスするのは個々の従業員であって社長ではないからだ。卓越した企業の共通点。 (****)
ジェフリー・ムーア: ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション
「イノベーションのジレンマ」を意識した内容。コアとコンテキスト。競争優位性が価格決定力を生み、大半の企業において資源投入が現在の収入の比率に応じて投入されることによって競争力を失っていく。さらに、コンテキストに企業が比重をかけていく理由を明快に説明しだ。衰退市場における企業はそれを認めたくない。それは衰退市場の成功体験者が経営者である点など慧眼である。いずれにしも沈みかかったタイタニックを救う手段はなく、新たな船を建造するしかないのだ。 (****)
ジェフリー・ムーア: 企業価値の断絶
コアとコンテクストの比率。コンテクストのアウトソーシング。複数ベンダーによるバリューチェーンの構築など、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」をベースに問題を整理している。コンテクストに時間を取られている経営者、従業員はこの概念は参考になるかもしれない (****)
スティーヴン・ホーキング: ホーキング、宇宙のすべてを語る
相対性理論と量子力学。私には難しいが、人間もビックバンがあったればこそ存在していることを考えると人間も宇宙の一部だ。すべてが宇宙の一部という見方もあるということ。それはまさに新たな天動説からの脱却かもしれない。 (***)
- ジョー パイン: マス・カスタマイゼーション革命―リエンジニアリングが目指す革新的経営
one to one の前段階といえるマス・カスタマイゼーション。顧客の購買履歴を記録することの重要性など。ドン・ペパーズやマーサ・ロジャースが本書を土台に理論を発展させた軌跡が読み取れる。 (***)
ドン ペパーズ: 人生は「売込み」だ!―成功をつかみとる究極の説得術
ドン・ペパーズの著書ということで読んでみた。セールスマンとして一流だったペパーズが極めて基本に忠実であったことが確認できた。「営業活動はその場で売り上げを生むものでもなく、そのきっかけを得るためのものでもない。いずれはこちらのサービスを求めてくれそうな企業の担当者との間に関係を築くことである。」「つまり営業とは見知らぬ人に狙いを定めて、会うことなのである。」 (**)
ドン ペパーズ: ONE to ONE企業戦略―顧客主導型ビジネスの実践法
one to one を実践するための教科書。わかっていても実行できない。それは、真の革新的な変化はそのシステムの外部から来るからであろう。自分自身では変われないというのが実態か。また、顧客ニーズの画一的なコモデティを扱う業界は顧客のニード・セットを拡大することによって初めてone to one を展開できるという。この考え方には救いがある。1冊でまさに並みのビジネス書の100冊分 (*****)
山岡 拓: 欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ)
車に乗らず、ブランド服も欲しがらず、スポーツをせず、酒も飲まず、旅行もしない。恋愛にも淡泊で貯金だけが増えていく。消費社会の終焉を感じさせる内容だ。教育の影響が大きいと思う。その消費行動を変えられなければ、それに備えなければならない。 (***)
コーマック・マッカーシー: ブラッド・メリディアン
人間と動物の差がなんであるのかを考えさせられる一冊。動物は必要以上に殺さないが、人間は必要以上に殺す。アングロサクソンの土地はすべて血で獲得されたものだ。かつ、かれらはそれを厭わない民族であることがよくわかる。 (***)
ドン ペパーズ: ONE to ONEマネジャー―先駆者たちの実践CRM戦略
個客に関心をもった企業のケース集。なぜ、このような企業のまねをしないのか。古い習慣はなかなか消えない。だから、その古い習慣の中を進む最前線は孤独な戦いとなる。周囲の反対を押し切らないと光は見えて来ない。 (****)
サイモン・セバーグ モンテフィオーリ: スターリン―赤い皇帝と廷臣たち〈上〉
独ソ戦の勝利者であったスターリンだったが、その背後でもっと多くの虐殺が行われていた。改めてその事実を克明に知った。誰のための戦争だったのか。革命というが、所詮立場の入れ替わりに過ぎない。政権交代も同じ。問題の本質は何をかではなく、誰がかなのであろう。 (***)
野口 嘉則: 鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール
父に電話で感謝と許しを求める娘のシーン。できそうでできずに終わる親子が少なくないだろう。墓前で無言で終わるより勇気をもって許すこと。許すことの難しさ、それは自責を認めることだからなのだろう。 (***)
石塚 しのぶ: ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは
サービスは付加価値ではなく、売り物そのもの。モノはその手段に過ぎない。エクスペリエンス(経験)のカスタマイズがキーとなる。サービスのパラノイアだけが生き残る世界が近づいてきた。小麦粉を売る時代は終わった。 (***)
セス・ゴーディン: オマケつき!マーケティング
表紙で本書の内容を誤解してはいけない。もともと石鹸に製造メーカーであったリグレーガムは、オマケのベーキングパウダー販売に移行し、さらにベーキングパウダーにチューインガムをオマケにつけたのが当たって、本業がチューインガム製造になっているという事実。何が本来の商品で何がオマケなのか?その判断は個客次第ということだ。ゴーディンの感覚についていけない。 (****)
セス ゴーディン: バイラルマーケティング
アイデアが通貨。アイデアの流通が商売となる世界を描いている。決してやさしくはない。理屈ではなく、感情で納得する世界。すごい! (****)
アマンダ・リプリー: 生き残る判断 生き残れない行動
9.11やハリケーンカトリーヌなどの災害に関する情報とデータは貴重だ。しかし、事実と行動心理を織り交ぜているためか、読み物としては少し冗長に感じる。 (**)
川田 修: かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール
トップセールスのトップセールスたる所以。基本中の基本は勉強になる。 (****)
大野 耐一: トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
徹底した無駄の排除が管理可能なプロセスを生み出している。ジャストインタイムと自働化の二本柱。リレーにおけるバトン渡しの例えは、チーム運営のキーとなる概念だ。ここまでの変革を導いた豪腕とそれを支えたトップに脱帽。 (****)
パトリシア シーボルト: 「個」客革命
なんと顧客フランチャイズとは!TCE、パーミッションなどきちんと押さえた教科書。事例も豊富。進んだ企業は時間をかけて「個」客対応をしている。 (*****)
カール スウェル: 一回のお客を一生の顧客にする法―顧客満足度No.1ディーラーのノウハウ
LTVを見据えた数々の徹底したサービス。わかってもマネができないものもあるかも知れない。「一度にきちんと仕事を仕上げること」などというのは簡単なことではない。しかし、2回目の修理に賃金を支払わない厳しさとそれに報いる給与体系がそれを可能としている。しかし、なんと行ってもスウェルの徹底した方針のマネができない。 (*****)
ニーアル ファーガソン: マネーの進化史
これはピーター・バーンスタインの「リスク」だ。チリにおける賦課方式の年金制度の見直しは興味深い。しかし、それは国家が破綻して革命でも起きない限りできないという歴史の証明か。 (**)
マイケル・ポーラン: 雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史
トウモロコシを出発点とした食品システムに対する警鐘。化学肥料や輸送コストから大量の化石燃料が食品製造に使われている事実も興味深い。上巻だけで充分な内容。 (**)
ドン ペパーズ: ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略
マーケットシェアから顧客シェアへ。規模の経済から範囲の経済へ。顧客情報自体が資産である。限りない価格競争に疲れた世界への処方箋。書かれたのはなんと1993年だ。出会うのが遅すぎた。 (*****)
セス ゴーディン: パーミションマーケティング―ブランドからパーミションへ
商品の売り込みの前に、見込み客の許諾を取り付けることによって販売の成功率を大きく高められる。コストはその方法の選択によるが、Webの活用は不可避。顧客とのリレーションを築けば、”門番”になれ、競合を顧客に寄せ付けないようにできる。売り込みの前のステップの重要性を説いている。 (****)
ケン アイバーソン: 真実が人を動かす―ニューコアのシンプル・マネジメント
人に対する厳しさが人を自立させる。逆説的なマネジメント。バスに乗せる人を選ぶ経営。リスクを取るとリターンがある。そんなシンプルな経営であるが、誰にでもできることではない。 (***)
クリス・アンダーソン: フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
Freeにすることによる集客とFreeのサービスが本来売りたいものの販売を加速するのはまだやわいが、逆に他人のサービスをFreeにすることで売れるものを探すという恐ろしいフレームワークを広めてしまった。既存のあらゆる業界にとってのパンドラの箱ともいうべき本。 (*****)
デビッド・S. ランデス: 「強国」論―富と覇権(パワー)の世界史
準備と突破。準備期間は企業では30年、国家では300年にもなる。その理由は、「文化」の醸成だった。ビジョナリーカンパニーが具合的なビジョンを掲げることなく、偉大な企業となったのはその文化ゆえ。文化もカラーもない企業・個人には顧客を引きつけることが困難であるということか。国家・民族がテーマであるが、そのまま企業にも当てはまる。 (****)
デービット パッカード: HPウェイ - シリコンバレーの夜明け (日経ビジネス人文庫)
HPのハリネズミは長期負債を追わないこと。その基本理念ゆえにIBMとのメインフレームの競争から深手を負わずに撤退できた。ビル・ヒューレットは常に「要塞を攻めるようとするな。相手が自分より強いときはなおさらだ。」と言っていたようだ。基本理念のしっかりした経営はぶれない。言われているHPの人間尊重の裏側には厳しい責任が問われていると推定される。バスに乗せる仲間には厳しい規律があったはずだ。この本からはその点は見えてこない。創業者の自伝であるからやむをえないだろう。 (**)
ジェームズ・C. コリンズ: ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
準備から突破へ。改めて理解できたのはその準備期間の長さだ。その準備に我慢ができない企業はGreatどころかGoodにもなれないことがよくわかる。コリンズの分析もさることながら、前作から感じるのはその筆致のすばらしさだ。訳も見事。 (*****)
ルイス・V・ガースナー: 巨象も踊る
インターネット革命の前夜においてウィンテルを無力化するサービス主導、ネットワーク主導に事業を組み替え、実行しきった経営者の視点と実行力に感嘆。自社商品とそれに付随するサービスから顧客の求めるソリューションの提供というサービスとそのためには他社製品もサービスに組み込むという戦略的判断の見事さ。まさに世界有数の経営者である。 (****)
トーマス・ワトソン・ジュニア: 先駆の才 トーマス・ワトソン・ジュニア―IBMを再設計した男
ジュニアの自伝。シニアとの葛藤が中心であり、IBMの事業そのものに対する内容は意外なほど少ない。 (**)
- ロバート・ソーベル: IBM―情報巨人の素顔 (1982年)
NCRのパターソンの影響がIBMのワトソンに受け継がれていたのが意外。100年以上前にサービスの概念を確立していたパターソンとそれを忠実に受けついだIBM。IBM成功の理由がよくわかる一冊 (****)
ゲイリー ハメル: コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)
ストレッチとレバレッジ。まさにその通り。コリンズ、クリステンセンの主張と非常に似ている。横串を指して読んでいると時代の認識が見えてくるような気がする。 (***)
ジェームズ・C. コリンズ: ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
読んでいて勇気の出る本だ。利益を超える何かがあるくらいでないと企業の継続はない。また、そのような企業はどのような従業員にとっても快適なところではない。従業員を選ぶ会社なのだ。ぬるま湯でビジョナリーカンパニーにはなれない。パラノイアだけが生き残ると言ったアンディ・グローブの言葉を思い出す。 (*****)
クリス ズック: 本業再強化の戦略
コアの事業が何であるのかを捉えることの難しさを教えてくれる。その認識が誤っていると周辺事業の展開も方向性を誤る可能性がある。イノベーションを意図する場合の出発点の認識。事例が豊富に提供されているが、インデックスのレベル。個々のケースについてはそれぞれ別途深掘りが必要。 (****)
松永 真理: iモード以前
とらばーゆの編集長までのリクルート時代の松永氏の話。「リクルートで偉くてもしょうがなかったりして」などと、「自ら機会を作り出し、自らを変えよ」とするリクルートならではの雰囲気が伝わってくる。「iモード事件」よりこちらの方がおもしろい。 (***)
クレイトン・M・クリステンセン: 明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press)
クリステンセンの第三弾。理論による将来分析のスキーム。定性的な事項のチェックにより将来の事業の成功の確率を高めようとしている。教育、航空業界、ヘルスケア業界などのケース分析が納得感を高めている。後知恵的な面もあるが、間違いないのは、やってみなければわからないということだ。前2作を読んだあとでないと理解は厳しい。 (****)
クレイトン・クリステンセン: イノベーションへの解 収益ある成長に向けて (Harvard business school press)
イノベーションのジレンマの続編。破壊的イノベーションによる参入の具体的な方法論である。既存市場における主力商品が必ず陥るコモデティ化と脱コモデティ化にに必要な業務プロセスが破壊的イノベーション。コア・コンピタンスも多角化のキーワード。ロジックがよくこなれており、わかりやすい。 (*****)
クレイトン クリステンセン: イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
どんな企業も陥る陥穽に対するガイド。なぜ第三者には見えることが、当時者には見えないのか。わかりすぎて怖い。技術を既存の顧客に当てはめるのではなく、新たな技術を適用するマーケットの選択がポイント。 (*****)
ディヴィッド・ハルバースタム: ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上
ハルバースタムの遺作。読んでいて目頭が熱くなること数回。リッジウェイが第二次大戦末期にローマへの空挺作戦に反対し、慎重な調査の結果、ぎりぎりで中止となった際のリッジウェイの涙。朝鮮戦争における全滅寸前の偵察隊を救った海兵隊のコルセアの地上攻撃。さすがハルバースタム。訳も見事! (*****)
ジェフリー キャノン: 「超」細菌の報復―抗生物質がつくりだすスーパーバグ
抗生物質のリスクがよくわかる、免疫の機能を高めたくなる。優先順位の高いリスクマネジメント (****)
加地 正郎: インフルエンザの世紀―「スペインかぜ」から「鳥インフルエンザ」まで (平凡社新書)
インフルエンザは風邪であること。その原因と予防・治療法がわかりやすく、整理されている。 (***)
ピート デイヴィス: 四千万人を殺した戦慄のインフルエンザの正体を追う (文春文庫)
スペイン風邪のウィルスを氷土の中の遺体から探す研究者。一方、豊富な検体を保有する米国が検体からウィルスを探す様子など、研究者の競争が話の中心。電子顕微鏡、DNAの分析など進化した手法でウィルスに勝てるのか。その点は不明。 (**)
デイヴィッド ハルバースタム: ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (朝日文庫)
ベトナムで戦うという一貫性のテープを止められなかった優秀な政治家と軍人の話。優秀で自信家がグループを作ると後戻りすることがかなり難しいということを実証している。無能な政府にも困るが、優秀過ぎても問題があるようだ。 (***)
デイヴィッド ハルバースタム: ザ・フィフティーズ〈第1部〉1950年代アメリカの光と影 (新潮OH!文庫)
米国の10年後を追っていると言われる日本。米国の歴史からあらためて現在の国際情勢と日本のポジションが見えてくるような気がする。アメリカ人は現在もフロンティアを目指して移動している。かれらの国民性は今も変わっていない。日本人もそろそろ、移動しなければならない。水爆開発、朝鮮戦争、GM、マクドナルド、マリリン・モンロー、公民権運動、TV、大消費社会の到来。盛りだくさん (****)
カール フォン クラウゼヴィッツ: 戦争論 レクラム版
勇気、自信を戦争の本質的な原則とし、理論をこの原則が自由に発揮できる程度に定めるべきであるとしている。理論は槍の柄であり、勇気が槍先であるとする。理論の上にも士気を重視するバランスに感銘を受けた。ビジネスも同様 (****)
柳井 正: 一勝九敗
不安定で流動的なプロジェクト組織としての会社論。イノベーションを繰り返さない限り賞味期限が来てしまい、市場から退場せざるをえない事実を非常に簡単なロジックで説明している。この部分だけでも読む価値があった。 (***)
レイ・A. クロック: 成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)
マクドナルド兄弟のテイクアウトの商売をフランチャイズに乗せたレイ・クロックの自伝。「未熟でいるうちは成長できる。成熟した途端、腐敗が始まる。」と書いた本人がマクドナルド兄弟に出会ったのは未熟な52歳であった。 (***)
ヘンリー・フォード: 藁のハンドル (中公文庫―BIBLIO20世紀)
ヘンリー・フォードの自伝。100年前の方が進んでいると思えるような仕事ぶり。政府に頼らない自立した企業人。まさにアメリカ人 (****)
ジョン・メイナード スミス: 生命進化8つの謎
人間の進化における「言語」の重要性を再確認。言語が遺伝子と並ぶ自己複製子であるミームの源なのだ。 (*****)
リチャード・ドーキンス: 利己的な遺伝子 <増補新装版>
アクセルロッドを読む契機となった本。「しっぺ返し戦略」が進化にも関連しているとの指摘が人間も所詮動物なのだという納得感に通じる。自分の判断・行動の分析にgeneとmemeの複線思考は有効。 (*****)
中山 信弘: 著作権法
技術的情報を保護する特許法と思想・感情を保護する著作権法であるが、著者は社会全体のためには特定の者への独占的な利用を制限的に解釈すべしとしている。そもそも知恵は過去の知識の組み替えあり、その方向性に賛同できる。また、私的使用目的の複製(§30)はWeb社会においてはむしろ緩いのではないかと思える規定であるが、そもそも立法の趣旨からするとその程度の保護で充分であるかもしれない。わかりやすい記述は法律の解説書とは思わせない。著者のたぐいまれな能力を感じさせる。 (****)
ジャレド ダイアモンド: セックスはなぜ楽しいか (サイエンス・マスターズ)
繁殖のためにはセックスが必要である。本書を読むと人間の性が他の動物に比較して如何に珍奇であるかを再認識するとともに、その必要性が理解できる。タイトルは原題どおりだが、内容は異なるのでご注意を (*)
チャールズ ダーウィン: 新版・図説 種の起源
進化論は生存競争というイメージが強かったが、中核は「自然選択」であった。差異や変化のうちで都合のよいものは残り、有害なものは駆逐される。そのシンプルな事実が長い年月のうちに積み重なり大きな変化へと発展する。数千年という長い年月も重要なファクターである。本書は写真・図が豊富で昆虫や鳥類などのイメージがしやすい。遺伝子が生き残るための自然選択の流れ。しかし、難解である。 (***)
- 児島 襄: 誤算の論理―戦史に学ぶ失敗の構造
選択の誤りが結果として判明したことを誤算というのであれば、それは後知恵に過ぎない。しかし、豊富なデータに基づいた本書は歴史の深掘りに貴重な資料。 (***)
戸部 良一: 失敗の本質―日本軍の組織論的研究
太平洋戦争における日本軍の組織論としての敗因の分析。日本人の気質は決して変わっていない。多くの企業の内部あるいは取引関係も本書に書かれているような失敗の構図を現在も内包
している。しかし、本当の敗因は産業基盤、国民の能力差、作戦の進め方の知識差などを中核とする圧倒的な国力の差であった。米国にとって当時の日本はライフルを持ったインディアンくらいの存在ではなかったか。それだけの国力の差があったと考えるべきだと思う。 (***)
米田 憲司: 御巣鷹の謎を追う -日航123便事故20年-
飛行するジャンボジェットのCGとボイスレコーダーで当時の状況を見事に再現している。あの機中にいたくない。 (**)
ジャレド ダイアモンド: 銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
植物栽培と家畜飼育が人口の増加を招き、余剰食糧の存在が、人間の分業を可能とした。家畜の存在は食料の増加のみならず、物資の運搬による交易を可能とした。さらに、新世界にはいなかった馬の存在は強大な軍事力を発揮した。知識の集積と産業革命への布石としての農業革命の重要性に気づかされた。 (***)
グレゴリー・クラーク: 10万年の世界経済史 上
産業革命前の人の暮らしが改めて確認できる。マルサスを読んでみたくなった。英国における各種のデータが充実。残念なのはせっかくのデータが一定のメッセージを構成していないこと。所得と幸福感が無関係であるというのは言い過ぎであると思う。タイトルで内容を過大に評価しない方がよい (**)
ナシーム・ニコラス・タレブ: まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ブラック・スワンよりこちらの方がタレブの考えがわかりやすい。
統計・確率に対する見方の革命。自分の予測能力に対する過信の戒め。さらには、ランダム性の受け入れへの心構え。ランダム性を前提とした生き方の主張。本書を読むと謙虚にならざるを得ない。おもしろい!
(*****)
V.E. フランクル: それでも人生にイエスと言う
「もし、私がそれをしなければ、だれがするだろうか。
しかし、もし私が自分のためだけそれをするなら、
私は何であろうか。そして、もし私がいましなければ、いつするのだろうか。」
「人生それ自体が何かであるにのではなく、
人生は何かをする機会である。」 (***)
R. アクセルロッド: つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)
協調と裏切り。最大の効果を上げるための付き合い方。外交は国家の付き合い方であり、かつ外交官、政治家個人の付き合い方でもある。個と集団の関係も同様。知っておいた方が人付き合いがおもしろくなるだろう。 (*****)
ナシーム・ニコラス・タレブ: ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
黒い白鳥は実はあなた自身なのだ。究極のリスクマネジメントは哲学でもある。 (****)
ヴィクトール・E・フランクル: 夜と霧 新版
「それでも生にしかりと言う」
ナチスドイツによって強制収容所に収容されて奇跡的に生還した世界的な精神科医のエッセー。フランクルは極限状態においても生きる意味を見いだした。極限とは数分で自分の命がなくなるか否かが決定し、しかもその予兆がほとんどなく、それがいつまで続くかわからない状態である。ブラック・スワンが自分の周囲を飛び回っている。リスクマネジメントの限界への対応としての認識論。極限状態における実証の説得力。
(****)
フィリップ・マグロー: 史上最強の人生戦略マニュアル
原題はLife Strategies
「事実なんてない。あるのは認識だけ」何が起きようとどう解釈するかは自分次第であるとする。まったくその通りなのだ。しかし、それは簡単なようで簡単ではない。マズローにおける自己実現のレベルだ。それは、自分に適合したゴールの設定が前提となり、自分をある程度把握していることがまたその前提となる。My Goal(自分探し)が一時流行したが、それはまさにGoalのない旅になる可能性も秘めている。それよりは、えい、ままよっ!もいいかも。
おもしろいたとえを一つ発見。「アラジンのランプの前でしどろもどろ。欲しくないものには事欠かない。」
渡辺昇一の訳本も読んでみたい。 (**)
エヴァン・I・シュワルツ: 発明家たちの思考回路 奇抜なアイデアを生み出す技術 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
エジソン、ベル、ライト兄弟から現代のウォズニアックまで発明家たちの発明家たる由縁と発明を作り出すシステムを解明した。学生に読んでもらいたい一冊 (*****)
アラン・G. トマス: 美しい書物の話―中世の彩飾写本からウィリアム・モリスまで
そもそも昔は字を読める人が少なかった。だから、同じ本はたくさんは必要なかったのだ。写本は修道院で作成された。写字生は尊敬された。聖書1冊に必要な羊皮紙は羊200頭分以上であったとのこと。非常に高価であったろう。昔の本は今の「絵本」だ。まさにページそのものが「絵」と言ってもよい。グーテンベルクの発明は識字率の向上が前提であったし、写字生との競争だった。市場に受け入れられるには市場の成長を待つ必要があった。早く気づく者の宿命。その時代に認められるとは限らない。 (**)
- W.H.プレスコット: ペルー征服 上 (講談社学術文庫 456)
強者が一瞬にして弱者になってしまった歴史がリアル。インカ帝国滅亡の歴史とピサロという特異な個性が恐ろしい。 (****)
野村総合研究所 城田 真琴: クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
クラウドコンピューティングが分散処理からメインフレーム時代の集中処理であることを簡明に説明されている。あらゆる業種の存立が左右される演算の主体と場所。情報ハイウェイの独占はあらゆる波をコントロールする。 (***)
パンカジ・ゲマワット: コークの味は国ごとに違うべきか
難解... 私には難しすぎる。しかも、各国にローカルルールがあるという主張は当たり前すぎて腹に落ちなかった。コークの味も、ハンバーガーの味もその国で売れる味にした方がいい。日本だけでとらえてもインスタントラーメン、味噌汁、さらにお雑煮も地方ごとに味が異なっている。近くからみるとこう見えるというだけではないのか。 (*)
ダニエル・アレン バトラー: 不沈 タイタニック―悲劇までの全記録
(***)
トーマス フリードマン: フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
(*****)
高宮 利行: グーテンベルクの謎―活字メディアの誕生とその後
フランシス・ベーコンが中世の三大発明とした羅針盤、火薬とならぶ活版印刷を発明したといわれるグーテンベルク
本稿にも残念ながら本人に関する記述は限られている。グーテンベルクについて知りたいと思うとがっかりする。それだけ本人に関する情報が少ないということか。
写本から印刷への変化は革命的だった。
活字だけではなく、印刷機、油性インクなどのハードウェアに加え、組版、レイアウト、判型などのソフトとの集成であり、まさに工業化への第一歩だったのである。
当時一番売れる書物は聖書であり、42行聖書が出版第一号であったのもうなずける。
宗教が情報のコントロールをしていたが、出版はその改革を推し進めた。しかし、文字を読める人が限定されていたという事実も確認しておく必要がある。為政者は国民は文字が読めない方が有利であると考えていた時代。
それを考えると、明治維新における義務教育の偉大さがクローズアップされる。
情報を公開した方が有利か、不利か?
情報の公開は既存勢力の猛烈な反撃を受ける。
歴史はすでに証明している。 (*)
アルフレッド・P・スローンJr.: GMとともに
(*****)
クリス アンダーソン: ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
(****)
フィリップ・J. ヒルツ: タバコ・ウォーズ―米タバコ帝国の栄光と崩壊
(***)
- タバコ・ウォーズ
大橋 巨泉: 巨泉―人生の選択 (黄金の濡れ落葉講座)
(**)
宮永 博史: 成功者の絶対法則 セレンディピティ
(**)
アンドリュー・S. グローブ: インテル戦略転換
(***)
梅田 望夫: ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
(***)
ピーター・L. バーンスタイン: リスク―神々への反逆
古代ギリシャのサイコロ遊びからマコービッツのポートフォリオ理論まで人類の歴史をリスク「選択」という切り口で書き上げた一大叙事詩。自由主義経済は選択の自由により人類を大きく発展させてきた。選択の技法と科学の歴史。読み物としても面白く、知っといて損はないエピソードが多数。過去の統計に対して不条理な人間。何を選択肢として把握でき、何を選択していくか。最後には勇気を持って一歩踏み出していくしかないか... (*****)
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