コラボ消費:私のものはあなたのもの
「ドリルが欲しいのではない。穴が欲しいのだ」
米国の家庭に存在するといわれる約5000万本のドリルは、そのほとんどが使われずに、ほこりを被っていると言います。一つの穴を開けるために1本のドリルを購入したことになるかもしれません。
使用することでモノの効用は発揮されますが、使用という観点からすると、モノを買う(所有)という行為は効用とは必ずしも関係ありません。
車の場合にはどうなるでしょうか。
「車が欲しいのではない。早く安全に移動したいのだ。」でしょうか。
我が家の愛車について考えてみると、年間平均走行距離はせいぜい2千キロ。
実際に走行するのは週に1〜2日でしょう。ほとんどの時間は、駐車場をあたためています。
使用(効用の発揮)は非常に少ないと言えます。
お金と資源に余裕のある場合は、それも全く気になりません。
しかし、そうではない場合。気になることはいくつもあります。
走らなくとも駐車場代、税金と保険料は必要です。
年間の経費を計算すると...駐車場156千円、自動車税45千円、自動車保険料100千円、車検(年間に換算して)60千円。さらに、車の購入価格を平均使用年数の11年で割ると、320千円。合計すると、全く走らなくても、年間で681千円のコストがかかっていることになります。
年間のコストを2千キロで割りますと、1kmあたり340円(除くガソリン)となります...タクシーだと、初乗り2kmまで710円(東京)です。ガス代を考えると、ほぼ同じというところでしょうか。
コストだけ考えると、車を売却してタクシーに乗った方がいいかもしれません。
もっと、長いレンジでみてみましょう。25歳から75歳まで50年の間、同じ条件で車を所有すると、34,000千円かかることになります!
住宅1軒分?!この金額に見合った効用があればいいのですが...
もっとも、こう書いている私は単身赴任をしていますので、マイカーに乗るのはせいぜい毎月1回。帰省したときくらいです。
単身赴任先にはマイカーはないので、移動手段はもっぱらママチャリ。たまに気が乗ったときはレンタカーでも借りますが、その気になる回数はあまり多くはありません。自動車に対する関心が薄くなってしまったのでしょう。
なければ使わないというレベルのモノになってしまったのです自動車は...私にとって。
そんな際は所有するよりは使用(シェア)する方が賢いかもしれません。
昔は「借りる」と言ったものですが、今後はシェアするという方が積極的な感じがします。シェアという言葉には、お互い様。所有とは違ったイメージがあります。
貸す方の考え方も専有するという所有の考え方に変化がでてきたようです。借りる方は貸す方のコストを負担する。貸す方は借り手に自分のコストを一部負担してもらう。そこにある意味の共感があります。
法的な所有権というものに大きな疑問が...所有することにより様々な税負担とそれを失うリスクとその対応を求められます。保険も掛けなくてはなりません。
何のために所有するのか?本来利用にあったはずです。
しかし、所有せずに利用できるとすれば...
カーシェアについても、B2Cだけでなく、個人所有の車を時間貸しするP2Pも出現してきています。借りる方の利便性だけではなく、所有する方が遊んでいる財産を有効利用できる仕組みができつつあります。
しかし、その使用に必要な条件は、アクセスの容易さという前提が必要となります。所有していれば、自宅の駐車場からすぐ乗れるのです。
車の予約に電話が必要だとか、キーを取りに行かなければいけないなどと煩わしければ使われないでしょう。それが、インターネットを中心とするテクノロジーの発展によって俄然便利になってきました。
所有から使用へ
持っていても使わなければ効用がありません。持っていなくても使用できれば!
今まで法的な所有権にこだわり過ぎていたかもしれません。あらためて所有という意味を考えさせられます。
また、所有から使用への流れは、新しいというよりは、むしろ、昔人間が共同体で助け合って生きていた時代への回帰なのではないでしょうか?
狩猟採集生活を送っていた時代、農耕生活の時代も様々な道具や家畜を共用してやってきたはずです。
そもそも、所有権は登記制度がなければ成り立たなかったわけですし、それ以前は所有ではなく、占有が使用の前提だったのです。
モノ(含むサービス)を仲間で共有し、反復してメンテナンスしながら使用する方向が見えてきました。
また、その過程においてできる数多くの新たなコミュニティは、その後のネットワークをさらに広げていく効果があることを見逃してはなりません。
これをWeb3.0と言うようになるのでしょうか。
このように書きましたが、私は所有する楽しみを全て否定するわけではありません。すべてがシェアではありません。
目的もなく、海岸沿いに車を転がすのもいいものです。
余裕があれば所有の満足感を味わいたいものです。
<シェアに取り組んでいるケース>
さすが、アメリカは進んでいます。おもしろいシェアがいっぱい
カーシェア 米国 Zipcar http://www.zipcar.com/
RelayRides http://relayrides.com/
日本 タイムズプラス http://timesplus.jp/
バイク モントリオール BIXI http://www.bixi.com/home
パリ Velib http://www.velib.paris.fr/
富山 シクロシティ http://www.cyclocity.jp/
部屋 米国 airbnb http://www.airbnb.com/
バッグ 米国 Avelle http://www.bagborroworsteal.com/welcome?ref=n1_e1-9
日本 Orb http://www.orb-s.com/top
工具 米国 TechShop http://web1.techshop.ws/index.html
玩具 米国 rentatoy http://www.rentatoy.co.nz/
子ども服 米国 thredup http://www.thredup.com/
家庭菜園 英国 SharedEarth http://www.sharedearth.com/
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