通信業者による通信販売のメリット
少し前の話になるが、2009年1月22日に東京海上ホールディングスとNTTファイナンスが共同出資による新損害保険会社「イーデザイン損保」開業に関してニュースリリースを行った。
NTTは、関連会社のNTTイフにおいて代理店として保険の通信販売を行っていたが、今回はメーカーとして参入することにした。グループ会社ではあるが、メディアという公共的な立場にありながら、自ら商品を販売していくという選択をしたわけだが、その選択は...
NTTはグループ全体で光通信ケーブルをほぼ国内で独占的に所有し、モバイル通信も巨大なネットワークを有している。自社のネットワークを使用する限り、宣伝費用はほぼ無料である。その点の強みは計り知れない。
既存の保険会社、販売代理店にとっては大きな脅威だ。
しかし、失うものも少なくないのではないかと危惧する。メディアの存立基盤は中立性である。
視聴者は盲目的にメディアを信じている 中立性をもって情報を伝えると。視聴者(なぜかこの場合はお客様とは言わない)が、コンテンツの内容、それを流すパイプに対して疑いを持つようになると...一昨年問題になったテレビ番組の「あるある大辞典」は視聴者にその警鐘をならした。
一方、インターネットの発達によって、情報は一部の限定されたテレビ局、新聞社から与えられるものではなく、消費者自らが発信、収集するものに変わってきた。ニュースなどはテレビ局のニュースよりもWikipediaの方が早い場合もある。天気予報もその地方のユーザーが実況を刻々とnetに報告してくれる。
政治に守られながら成長してきた通信・広告業界であるが、守るべき肝心なそのメディアの視聴率が大幅に低下してきた。将来の経営は決して楽観視できない。
NTTも例外ではない。通信させてあげる会社ではなくなったということか。NTTの選択は如何に...
国内において保険の通信販売は珍しいことではなくなったが、米国ではすでに1931年に自動車保険の通信販売が始まってた。
前回書いたシアーズ・ローバックが、オールステートという保険会社を設立して保険の通信販売を開始していた。シアーズ・ローバックの通信販売のカタログの自動車用品のパートに自動車保険の販売用紙を添付して始めたという。
きっかけは、自動車用のタイヤ(オールステートという名の)を販売して大当たりし、その延長線上に保険も通信販売したというのだ。
当時の米国の保険販売はブローカーが仲介して消費者に販売しており、シアーズ・ローバックの物品販売のポリシーと同様に中間マージンを控除して安価に販売することが、目的であった。そういう意味では流通業者にとって流れて通るものであれば商品はなんでもいい。メーカーとはそこの感覚は大違い。
その後オールステート・インシュランスは通信販売から直販社員によって業容を拡大していくが、一時はシアーズ・ローバックの本業である小売り部門の収益を上回るようになった。
(1995年にシアーズ・ローバックはオールステートを売却している)
78年前のカタログによる通信販売から保険の販売は大きく進歩したのだろうか?
どうしてオールステート・インシュランスは通販から、直販、代理店販売にウエイトをシフトしたのだろうか?
シアーズ・ローバックのカタログによる保険の通信販売を見てみると、歴史は繰り返すという言葉が保険流通にもピッタリと当てはまるような気がする。
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