米海軍のストックデール中将はベトナム戦争中にスカイホーク機に搭乗中に撃墜され、8年の間捕虜としてハノイヒルトンに捕らわれていた。米軍の最上位士官としてベトナム軍の拷問に耐え、生還した。その経緯は”In Love and War"に描かれているという(今度読んでみたい)“ストックデールの逆説”としてJim Collins の”Good to Great” に紹介されている。
ストックデールは次のようにコリンズに語っている。
「私は結末について確信を失うことはなかった。ここを出られるだけでなく、最後には必ず勝利を収めてこの経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにすると。」
耐えられなかったのはどういう人だったのかとの問いに対して
「それは簡単に答えられる。楽観主義者だ。」「クリスマスまでには出られると考える人たちだ。クリスマスが近づき、終わる。そうすると復活祭までには出られると考える。そして復活祭が近づき、終わる。次は感謝祭、そして次はまたクリスマス。失望が重なって死んでいく。」
「これはきわめて重要な教訓だ。最後には必ず勝つという確信、これを失ってはいけない。だが、この確信と、それがどんなものであれ、自分が置かれている現実の中でもっとも厳しい事実を直視する規律を混同してはならない。」
誰でも楽観的になりたい。そのうちにいいこともあるさと。
ストックデールの言うことは厳しすぎるかもしれない。人もたまには息を継ぎたい。しかし、生き残るためにはそこまでの規律が必要なのかもしれない。コリンズはヴィクトール・フランクルも引用している。フランクルは自分が望まない人生も人生であるという点でストックデールの主張とは少し違っていると私は理解している。いずれにしても、共通しているのは、諦めてしまえるような環境の中においても生きる意味を見いだせる力。生き続けることのできる強さだ。
最も厳しい現実を直視する規律は個人・企業に最悪を想定しつつ、ゴールを指向させる。
常に最悪を想定しておくという選択はまさにリスクマネジメントの基本だ。日和見的にリスクの想定をするのは明らかに間違っているのだが、時に自分には甘くなりやすい。
しかし、どこまで厳しく考えればよいのだろうか。そんな迷いが生じた時にストックデールを思い出したい。
コメント