金融商品とセールスマンの選択
スーパーやデパ地下の食品売り場に生産者の表示が目立ってきた。
商品に生産者の写真と想いが短いメッセージで添えられている。価格は生産者表示のないものに比べて多少高い場合が多いようだが、手が伸びてしまう時がある。
遺伝子組み換え作物とか、農薬の残留などは素人にはわからない。
しかも、健康への影響はすぐにではなく、ずっと後に現れるものだ。
そのような観点で生産者が顔を見せるのは責任の所在を明らかにしており、個人的には全く知らない人ではあるが、それがない商品に比較して安心感があるといえる。
一方、金融商品における生産者表示はどうであろうか。
金融商品に生産者があるということを私は聞いたことがない。というのは、金融商品は「金融機関」(産地)から購入するものであって、セールスマン(生産者)から買うという概念がそもそも消費者にないからではないだろうか。
野菜でいうと、どこの産地の大根も同じだろうということだ。
そうだろうか、産地が違えば品種が違うし、同じ産地であっても農薬を使う生産者もいれば有機農法の生産者もいるのだ。
金融商品に話を戻すと、例えば、年金・投信など老後の生活資金の運用結果などは、十数年以上後になって判明する。
生命保険も自分が病気や死んだ時にはじめて役に立つか否かわかるものだ。
食品の健康に対する影響以上に金融商品の選択は人生にとって重要だ。
チェックポイントは2つある。金融機関(産地)とセールスマン(生産者)の2点だ。
ここではメーカー(産地)の問題は置いておく。というのは商品の選択が問題ではない場合が少なくないからだ。
問題は顧客の目的に合致した提案であるか否かであり、その手段である商品は二次的な問題であることが多い。
もっと言うと、金融商品は最も模倣がしやすい商品であり、すでにコモデティ(代替可能な汎用品)となっている。
消費者にも問題があると思う。
人生に非常に重要な問題であるにもかかわらず、時間を掛けて検討しようとしない。
金融商品は長期にわたってメンテナンスが必要な継続的な取引であり、購入は入り口に過ぎず、成果となるまで大事にメンテナンスしてくれる担当者が大事なのだ。
確かに食品、自動車、住宅などと比べると見えない商品であり、わかりにくい。
だからこそ、賢い消費者は商品ではなく人を選択すべきだ。
適切なセールスマンが「個」客に提供するのは問題を解決するサービスであり、解決に必要な適切な商品なのだ。
従って、セールスマンの良否をどのように見極めるかがポイントになってくる。
あとでだまされたと言っても自分は救われない。それこそ自分の判断ミスなのだ。
人の選択ミスであったということ。
でも見極める方法は難しくない。簡単な方法は、セールスマン自身に証明させることだ。このように聞いてみて自分にとって納得のできる回答が返ってくるか否かで判断すればよい。
「どうして、他のセールスマンではなく、あなたから購入した方がよいのか?
仮にあなたと同じ商品を扱っているセールスマンが他にいるとした場合にも、あなたが私の担当者になった方がいい理由はなにか?」
マーケティングではUSP(Unique Selling Proposition)と言っている。簡単に言うとセールスマンの「売り」だ。
言葉だけで自分の誠意を語ってもらっても一文の価値もない。客観的な証明が欲しい。
口ではなんとでも言えるからだ。
最終的にはそのセールスマンが醸し出す「人間力」なのだが、それだけでは判断できないだろう。
私であれば、今までの人生、仕事に対する想い、販売実績、資格(FPは最低か)、第三者の評価・証明などを聞くだろう。
今商談をしているセールスマンが自分にとって適切だと積極的に思えない場合は決して購入すべきではない。あとで後悔する可能性が大きい。
むしろ、賢い消費者は積極的に自分に適切なセールスマンを捜すべきではないだろうか。
まず、WebでUSPをアピールしているセールスマンを検索すればよい。
アピールしようとする人にはアピールするものが何かあるはず。
それがない人にはどんなメディアにもアピールができない。
野菜の生産者表示における短いメッセージと同じだ。
金融業界においても今後生産者表示ができるセールスマンが出現するだろう。
また、自分にとってUSPのあるセールスマンを探す消費者が増えてくる。
「あたなは誰から買ったの?」
結果として消費者、生産者双方のレベルが上がるのである。
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