週末に三河湾沿いにマリーナを巡るドライブをした。豊橋港から蒲郡、形原、そして西浦まで
帰り道で給油のためにガソリンスタンドに寄った。往路で価格の表示に注意しながら走ってきたので、あらかじめ目安をつけておいた店だった。セルフのスタンドであり、かつ私が割引のあるクレジットカードを持っているメーカー系列であることも選定の理由の一つ。車を給油機の横に止めて機械にカードを入れようとしたところ、持ってきていないことに気づいた。カードがあると表示金額の2円引き(1Lあたり)なのでしまったと思ったが、後の祭り。
精算は店内で行うタイプ。気づくと店員はすべて女性だった。店内は小さなコンビニだ。
若い女性の店員にダメ元で「カードを忘れたんですけど...」と言ってみた。すると、彼女はなんのためらいもなく、「結構ですよ。2円引いておきます。」ときた。
サプライズ!
カードがなければ、断られるか、あるいは上司に確認するか二者択一であろうと想像していたのであるが、あまりにも簡単に顧客の要望に応える点にサプライズ。店の規定でこのような場合も割り引いていいとしているのか、それとも店員になんらかの権限委譲がされているのか。
次回の給油もここでと思ったのは言うまでもない。SS業界のサービスレベルは急速に上がってきている。
セルフ給油の場合に店員がおらず、給油機のところで精算ができるパターンもあるが、ここはあえて店内に誘導して店員とのコミュニケーションを図っている。コミュニケーションがなければサービスもないのだ。ただの自動販売機になってしまう。このコミュニケーションを楽しみにリピートする顧客を狙っている。
高レベルの競争は消費者にとって好ましい限りだ。
サービスマスターはダスキンとの提携で日本にも進出している。清掃を中心とする労働集約型の仕事が中心。30カ国で20万人以上の従業員を要して顧客満足度を上げている。そのポイントはそのObjectiveに現れている。
その最たる部分は社長だったウィリアム・ポラートが語る「すべての従業員の尊厳と価値を認める」という点だ。顧客のニードを把握して対応できるのは末端の従業員だけだ。だから、従業員が自分で判断して自分で当面の顧客にサービスを提供しない限りCSは高まらず、結果として業績も上がらない。
さらに、従業員の持ち株制度によってオーナー意識を持たせる。このように書くとどの企業でもやっているじゃないかと言われそうだが、形ではなく、気持ちの違いということだろうか。形式的ではないのだ。
それを感じさせるのは、「道徳的規範を持たない企業は人間的なこころの破綻を来す可能性がある。」とするところだ。経営者と従業員が同じ価値観で結ばれていなければ、意思が伝わらない。それぞれ定義の違う言葉で話しても相手の言っていることは理解できないのだ。
CSをまず第一に考え、そのためにESの向上を図る。そんなことをサービスマスターは1920年代から実践してきた。病院や、企業で清掃をする仕事というのは一見陽のあたらない仕事だ。それをプライドをもってできる仕事に昇華させたのだ。
週末の私の体験に戻る。
ガソリンスタンドは代表的なコモデティを扱い、価格競争が激化した結果 縮小均衡でなんとかやってきた業界だ。ところが、その競争の中から価格以外の点に顧客満足を創造してきている。その背景には、従業員一人一人が自分で判断して決められる権限を有し、それによって尊厳をもって仕事をできる環境を経営が作り上げたのだろう。
どのような仕事においても、顧客の要望に即応する用意と権限委譲を現場に提供することによってCSは大幅に向上する。いずれにしてもスピードが命なのだ。
コメント