小雨の中、妻とともに横浜ベイサイドのアウトレットモールに行って来た。Helly Hansen の夏物を仕入れるためだ。
モールの広場に大きなクジラの尾。クジラの尾が噴水になっているのだ。その尾っぽの先にMITSUI OUTLET PARK という看板が見えた。
このアウトレットは三井不動産がプロデュース・運営している。以前より、同社がアウトレット商業施設を多数運営していることは知っていたが、雨の中のクジラの尾っぽを見てその効果を再認識した。
同社のIR資料を見てみた。同社の賃貸事業は、オフィス事業と商業施設の二本立てなのだが、オフィス事業がほぼ前年横ばいに推移しているのに対して、150億円の増収となっている。分譲事業がはかばかしくない環境において商業施設の賃貸事業の重みは増している。
不動産の賃貸事業は歴史的に住宅、オフィスというようなリスクの小さい相手を中心に成長してきた。大規模な商業施設はGROWING TOGETHERというコピーが語るように、流通業者とともに消費者に接近して賃貸収益を拡大しようという明確な経営方針が見えてくる。見込み客の開拓のリスクと責任を流通業者とともに負っている。アウトレットモールへの集客の責任は一義的には同社が負っているといえるだろう。
同社は不動産業であるが、メーカーというとらえ方もできるだろう。メーカーが販売に直接乗り出す点に関してメリデメは様々だが、最大のメリットは規模の利益であり、第二はテナントが成功するノウハウの習得ではないだろうか。同社の不動産に入居すれば儲かる可能性が高いのであれば、小売業は不動産選択の条件の一つに同社を数えるだろう。規模は若干小さいが、調剤薬局が運営する医療モールもその一例。医業の開業コンサルとともに、リアル店舗の提供まで請け負っている。資金力、営業力がない中小企業にに対しては有力なパートナーと言えるだろう。
一方、自動車販売会社とガソリンスタンドの業界は、流通支援というよりは、メーカー自身が販売に直接乗り出してきた事例。不動産業界にもこの選択はないとは言えない。売れる自信がつけば自分で売ればいいのだ。
商業施設の賃貸事業がクジラの尾っぽだとすると、海中にある頭を再び海上に浮上させる力は尾っぽにあると言えるだろう。何を尾っぽととらえるかが問題なのだが、横展開(品揃え)ではなく、縦展開(顧客への接近)だと思う。
ビッド(Web)を中心にメーカーが販売店支援を強めているが、アトム(リアル店舗)を支援する動きは今後強まるだろう。
コモデティ化した商品を販売するためには、販売店と一体となってサービス・エクスペリエンスを開発していく必要がある。それを無視していると、大変なことになる。現在売れていないとすれば、それは景気のせいではなく、魅力と競争力を失った自社のためであるからだ。
メーカーというポジションは、より顧客寄りになっていくことによって定義も変遷していくだろう。IBMがサービスカンパニーと称したように。
雨の中でクジラの尾っぽは力強く水面をたたきそうに見えた。
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