船を操船していて一番怖いのが、衝突による打撃です。
船体に穴が開くと海水が船内に入り込んで沈没してしまいます。
もう少し具体的に書くと、水が船内に入り込んでくるのは喫水線(水面と船体が交わる線)の下に穴が開いた場合です。その穴が大きければ大きいほど、入ってくる水が大量になるので沈没するスピードも早くなります。有名なタイタニック号は氷山に喫水線下の船体を打ち破られて沈みました。
また、魚雷は喫水線下に大きな穴を開けることを目的とした兵器です。
一方、同じ穴が開いたとしても喫水線の上であれば水が入って来ないので沈むことはありません。
海の上に浮いている漁船や本船は天候が良ければ目視できるのでさほど気になりません。しかし、海面の下に隠れているかもしれない暗礁は発見が難しいために危険です。当然、沖合には暗礁はありません。沿岸部で海に向かって岬が突き出ているところの延長線には暗礁がある確率が高いと言えます。
ヨットを操船していると、岸寄りを航行した方が距離が短くなる場合でも、なんとなく安全を期して沖あいの航路を選択してしまいます。
「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」に喫水線の原則という話がありました。
喫水線の原則は何か選択を行う際の判断基準の一つです。
物事が順調に行っている場合は現在の行動をそのまま継続すればいいので、他の手段を選択する必要性はさほどないでしょう。しかし、今うまく行ってないとすれば、現状に対する何らかの改善策、もしくは他の手段を選択したくなるでしょう。
<喫水線の原則 3つの問い>
1.良い結果になった時に何を得られるのか
2.極めて悪い結果になった場合にどのような打撃を受けるのか
3.その打撃に耐えられるのか
判断する際にダメージが喫水線の上に発生するのか、下に発生するのかというメタファーは直感的でわかりやすいと思います。特に船の沈没は死を想定させるので慎重になるでしょう。
しかし、ダメージが喫水線の上に来るのか、下に来るのかという判定は予想不可能な場合もあるでしょう。特に未経験の分野の場合にです。それがわからない場合の選択は悩みの種です。
判断する本人の性格と判断時の心理状態に大きく左右されるのは確かです。
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