「この姿を覚えていたい...」
バレエスクールの教室で、ケイト・ブランシェットを引き寄せて鏡に映る二人を目に焼き付けようとするブラッド・ピットの言葉
1918年、第一次世界大戦で息子を戦死させた時計職人が、時を遡る時計を駅に作ったところから話は始まります。
ベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)はその年に誕生します。外見は80歳の老人として
逆回りする時計の刻みとともに歩むように、ベンジャミンは若くなっていきます。
そして、2002年、駅の時計が新たに普通の時計(将来に向けて時を刻むもの)に交換された時、ベンジャミン・バトンはデイジーの腕の中で、生まれたばかりの赤ちゃんの外見で永遠の眠りにつきます。
つまり、80年間。80歳で生まれて0歳で死ぬ。その人生の物語です。
そのあらすじを追うのはやめておきます。
印象的なエピソードをいくつか...
<デイジーの交通事故>
デイジー扮するケイト・ブランシェットは踊り子として絶好調の時に交通事故に遭ってしまいます。
通りで踊る彼女を行き会わせたタクシーが轢いてしまうのですが、そのタイミングはほんの数秒のことです。
ストーリーはその経緯を丹念に追って行きます
タクシーに乗っていた女性が自宅を出る時に忘れ物をしなければ...
忘れ物を取りに帰った際に電話がかかってこなければ...
タクシーの運転手がカフェでお茶を飲んでいなければ...
通りでトラックに路をふさがらなければ...
タクシーに乗った女性が商品を予約していた店の店員が失恋していなければ...
デイジーが一緒に出かけようとしていた友人の靴紐が切れなければ...
小さなコトの積み重ねが人生を狂わす重大な出来事に発展します
アマゾンで羽ばたく蝶が、カリブ海のハリケーンに発展するように
とは言っても、こんなことは日常茶飯事でしょう。
重大な結果が発生した時だけ大騒ぎしているのです。
そんな時には、「想定外」とか「たまたま」という片付け方をするわけです。
しかし、この事故がなければ、二人は結ばれていなかったかもしれません。
わからないものです。何が良いかは。時間の経過とともにその評価は変化していきます。
<ヨットとセイリング>
再会した二人はニューオーリンズからフロリダへセイリングに出かけます。
ティラーを握るベンジャミン
浜辺にアンカリングするクラシックなヨット
ヨットから海に飛び込む二人
やはりヨットはいいですね。
二人の愛を育むのにヨット以上のコンディションがあるでしょうか?
<ドーバー海峡横断泳>
ベンジャミンは、ロシア ムルマンスクでドーバー海峡横断に失敗したエリザベスという女性と関係を持ちます。彼女はその横断に失敗してから何もしていない人生だといいます。
しかし、その随分後、ベンジャミンはデイジーと食事をしているレストランのテレビに映っている彼女を見るのです。
それが、エリザベスが68歳でドーバー海峡横断に成功した姿でした。
ベンジャミンのラストネームであるバトンという名はbuttonのことだろうと思います。
ボタンは掛けたり、外したり。
あるいは、しっかり止めておくという意味に取れます。
行き会う様々なコトはボタンの掛け外しか...
「永遠はない」「いやある」という会話が数回でてきます。
記憶は永遠かもしれません。
それは、ベンジャミンの日記が
それはデイジーから娘のキャロラインに
「この姿を覚えていたい」
というようなボタンを数多く掛けていきたいものです
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