コモデティからの脱出はTotal Customer Experienceで
日曜日は日経新聞の書評欄をチェックしている。その書評欄をきっかけに購入する本は少なくない。Web版を見てみると、「紙」版と全く同じコンテンツが載っていた。気になる本が一冊あったので早速手配することにする。すぐに手配しないと忘れてしまう。
まず、図書館のWebで検索してみる。やはりなかった。
直ぐにAmazon.comをクリック。すると、探したい本に行き着く前に、これでもかというくらい私にとって気になる書籍が並んでいる。こんな本もあったのかという気づきが多い。そこで本来探すべき本は後回しで、いくつか並んでいるおすすめ本のタイトルをクリックして内容を見てしまうことになる。
Amazon.comは私のレーダーが何を探しているかをいつも注視している。その結果、その提案の精度がだんだんとあがってきているように感じる。
そして、思い起こして、目的の本を書名で探そうと数文字入力しただけで、すぐにプルダウンメニューに探していた書名がでてくる。その書名を選択して、1−Clickだ。明日配達されるだろう。
一方、Amazon.comがなかったら、どうなっているだろう。私はリアル本屋に行き、書棚を探し、レジで代金を支払って、また帰ってくることになる。在庫があればの話だ。さらにロングテールに属するような本になるとリアル店舗ではお手上げだ。取り寄せてもらう必要があり、時間もかかるし、もう一度取りに来なくてはならない。
このようにAmazon.comは時間と手間を私から省いてくれている。読むことに集中できる。ありがたい。「本」当に感謝している。
とはいえ、私はAmazon.comの社員とは一度も会ったこともないし、話したこともない。だから、「ありがとう」とは言えていない。しかし、このようにビッドの世界ではあるものの、私への関心の深さに対して、いつの間にか私もAmazon.comに親近感をいだいてる。可能な限りAmazon.comで買いたいと思う。なぜなら、私が過去に購入した本や、作家の傾向を把握して「次はこの本はいかがですか?」と薦めてくれるのはAmazon.comだけだと思うからだ。Amazon.comとリレーションを深めることで私はよりメリットを享受することができる。
パトリシア・シーボルトの「個」客革命はこのような顧客の思いをTCE(Total Customer Experience)と言っている。それは、すべてのチャネルとタッチポイントで安定したブランドイメージとサービスを実現して「個」客との間に望ましい絆を育むことを意味している。
そして、サービスまでがコモデティ化している現代の企業は勝ち残るために、それをカスタマーシナリオとしてあらかじめ用意しておかなければならないという。
私のような「個」客を”顧客フランチャイズ”と呼んでいる。”顧客フランチャイズ”とは、「個」客自身が今後Amazon.comで購入する商品の総額(Lifetime Value)に加えて口コミで他の顧客に波及する影響を加えたコンセプト。
「個」客にフランチャイズ(特権)を与えて事業のパートナーにしてしまおうというのだ。顧客に対してフランチャイズ(特権)とは何かというと、即ちTotal Customer Experience。顧客にフランチャイズ(特権)とは見事な見方だ。
顧客をフランチャイズ化する成否は”顧客資本主義”ともいえる顧客への関心の深さ・絆の深さに依存するという。そこにはパーミッションを得た上での情報提供とニーズの聞き取りが不可欠。情報発信する勇気が必要だ。
また、顧客に対するスタンスは、自社だけでの囲い込みという売り手の発想ではなく、「個」客の立場で考える必要があるとする。「個」客にはどこからも自由に買えるオープンな環境が望ましい。従って、顧客はマルチチャネル ・マルチタッチポイントを望む。今までも販売サイドが勝手に顧客を囲い込もうなどど机上で考えていたが、できた例しはない。それはそのとおりだろう。自由主義経済じゃないか。どの店から何を買おうとそれは顧客の自由だ。それはコントロール不能。むしろ、顧客にとってオープンな環境を尊重した方が自社の売り上げは増えるという計算なのだ。
従って、顧客に対してダイレクトなコミュニケーションを図っても、マルチチャネル ・マルチタッチポイントによる「個」客対応を指向すると、チャネルコンフリクトは発生しにくい。どの業界でも心配している直販か代理店販売かというような二者択一ではないのだ。むしろ、既存のリアル店舗にビッド店舗を組み合わせることが望ましい。ケースで取り上げられている企業はほとんどマルチチャネルで成功している。言い方を変えると、リアル店舗とビッド店舗の組み合わせがより従来のリアル店舗の機能を活性化させるということだろう。よりビッド店舗のスパイスを効かせることで。
本書はそのケースが豊富で参考になる。
Egg 英国プルデンシャル生命のWeb銀行
Snap-on リアル店舗とビット店舗のシナジー(機械工具)
Charles Schwab リアル店舗とビット店舗のシナジー(証券)
Tesco 宅配システムとリアル店舗(英国のスーパー)
Tinbuk2 個性的なバック(米国)
National Semiconductor 設計システムの提供
Buzzsaw 建設プロジェクトプロセス管理ソフトの提供
Medscape 電子カルテ・データベース
W.W.Grainger 世界最大の部品屋
顧客には時間がない。早くことを片付けたい。判断にあたっては、わかりやすい材料を提供してもらいたい。さらにいうと、顧客自身が処理しなくても、あるいは判断しなくてもいいようにやっておいてほしい。そんなことをしてくれる企業が価格競争だけの世界から脱けだしてブルーオーシャンを泳げるようになるのであろう。
話は変わるが、今日愛用のMacに新たにATOK2009をダウンロードした。それで本文を打っている。Windowsではすでに使っていたが、やはり快適だ。どうしてこんなに効率よく変換してくれるのかと、キーボードを打つことが楽しくなってしまう。しかし、ATOKの凄みは辞書の豊富さではなく、その学習機能にある。私の(誰でもだが)変換履歴をみて次回以降にその癖を反映してくれる。そして、私の手間と時間を大幅に削減してくれる。もっと、ありがたいのはストレスがないことだ。何度も打ち直したり、変換をやり直すのは精神的にいいものではない。ATOKはこのような意味で私に大きな関心をもってくれているサービスといえる。
これが今日私が感じたTotal Customer Experience。
おそらく、私はAmazon.comとATOKの顧客フランチャイズなのであろう。事実ヘビーなリピーターであるし、このように他の人にも推奨している。
自分の顧客にもTotal Customer Experienceを提供しなくては!
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