単身赴任先の本棚はすでに一杯であり、机の上、さらに床の上にまで本が積んである状態です。
昨年は本のカッターを購入してスキャナーで読み込み、PDF化に挑戦しました。
しかし、結構手間がかかるんです。そのため、その後作業があまり進んでいません。
そこで、私にとっての次の検討課題は電子書籍です。
電子書籍は本の代替になるのでしょうか?15世紀にグーテンベルグが発明した活版印刷と紙の組み合わせは見やすさと携帯性に優れており、その出現から500年を経てもいまだに情報メディアの王様です。
また、書棚に並んだ本の背表紙を見ていると不思議な満足感があります。なんというのでしょうか、その本の内容が自分の体の一部であるような...蔵書という言葉があるように、本を所有することにも喜びがあるようです。
一方、読者から見た本の弱点はその物理的な質量と保管スペースです。出張や週末の旅行の際には3冊程度持ち歩くこともあります。やはり、軽くてかさばらない方がよいのです。
さらに、当然のことですが、デジタル的な使い方ができないことです。WebやPDFには、文字をクリックして辞書を立ち上げることや、文字を検索する便利さがありますが、紙の本ではそれができません。
作者の立場からすると、価格の大半は印刷製本のコストと小売マージンで占められており、その印税は一般的に10%程度だと言われています。相当売れないと、儲からないということです。デジタル化によってコストを削減することにより、その分だけマージン増やすことができます。
そんな中で、すでに書籍の流通に店舗のデジタル化で革命を起こしたAmazon.comのジェフ・ベゾフは、さらに「紙」の書籍に対して電子書籍で革命を起こそうとしています。
電子化は在庫と配送という物流の問題を解決するでしょう。
しかし、 トレードオフにおいてケビン・メイニーは今のキンドルに否定的です。
メイニーはすべてのサービスは上質か手軽かのどちらかの軸に寄っていなければならないと主張します。
上質でも手軽でもない商品・サービスは結局のところ中途半端であり、消費者から支持されないというのです。
手軽さは価格と入手のしやすさですが、キンドル本体の価格は本とは別に支出しなければなりません。さらに、一冊9.99ドルという価格がどう評価されるか微妙です。
最大の問題は、電子化されている書籍はごく一部であるということであり、入手しやすいとはいえません。
一方、上質さは、経験、オーラと個性がポイントであるとしています。経験に関しては、紙の書籍を単に電子化するだけであるならば、紙の見やすさには勝てません。動画、音声などの機能の充実が求められます。個性は本自体の美しさ、蔵書の楽しみなどはデジタルでは見いだしにくいでしょう。
現段階で見ると、電子書籍は手軽さも上質さもグーテンベルクに負けているようです。
何よりコンテンツです。ガラパゴス電子書店で「トレードオフ」を探しましたが、ありませんでした。デジタル化の最大の強みはロングテールにあるはずにもかかわらず、現段階ではむしろ、ショートヘッドなのです。
読みたいコンテンツを揃える仕組み作りのポイントは著作権者へのメリットでしょう。
さらに読者にとっては価格。アマゾンのマーケットプレイスに出店されている古本は驚くほど低価格です。送料を含めても。マーケットプレイスの仕組みが古本のリユースを創造しました。この仕組みによって本は何人もの所有者のところを旅することができるようになったのです。書籍回転率とでもいうのでしょうか。
日本において電子書籍が広まるにはあと数年待たねばならないでしょう。
メイニーの上質か手軽かという主張は書籍にもそのまま当てはまると言えます。
グーテンベルクの上質さと手軽さは500年超えられないほど卓越した発明だったのですね。
電子書籍が一般化したとしても、紙の本はかえって非常に贅沢なものになっているかもしれません。自動車の世の中で馬車に乗っているような。
紙の本のありがたみを再認識しました。
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