「マルコム・マクリーン(Malcom McLean)が、先見的だったのは、海運業とは、船を運航する産業ではなく、貨物を運ぶ産業だと見抜いたことである。
輸送コストの圧縮に使用なのは単に金属製の箱ではなく、貨物を扱う新しいシステムなのだということ。
港、船、クレーン、倉庫、トラック、鉄道、そして海運業そのもの つまり、システムを構成するすべての要素が変わらなければならない。」
愛艇で、下田港を出て、5マイル程南下すると、本船の航路に行き当たります。手前は東行き、奥は西行きの航路です。
様々な船と行き交いますが、大きいと感じるのがコンテナ船です。
コンテナを高く積み上げているので、船が一層高く大きく見えます。
海上でよく見るコンテナ船に積み込まれているコンテナですが...
コンテナによって、ロジスティクス(物流)に革命が起きたことを「コンテナ物語」を読んで再認識しました。
物流という概念を超えて、コンテナなしにはグローバルなサプライチェーンというビジネスシステムが成り立たなかったであろうこと。結果として、コンテナが立役者となって、世界をフラット化させたのです。
コンテナ船が導入される以前の海上輸送のコストは、平均すると輸送する商品の価格に対して、約30%。
モノを動かすには、かなりのコストがかかっていたのです。
その海上輸送に関わる最大の出費は冲仲仕の賃金であったそうです。
1959年のある報告によれば、海上貨物輸送にかかわる経費の60〜75%は船が海上にいる間ではなく、波止場にいる間に発生していたとのことです。
冲仲仕が人力で荷役をする限り、作業時間を短縮し、港と船を効率的に使うことは到底望めなかった。
しかし、コンテナはその荷役作業を僅かに60分の1に縮小してしまい、沖仲仕の仕事を実質的に奪いました。
さらに、港につきものの倉庫を不要にしたのです。
ここまでは、結果としてのコンテナの発展のおめでたい話です。
しかし、マルコム・マクリーンが1956年に最初にコンテナ船を使用してから、軌道に乗るまでに実に30年近くを要したのです。
イノベーションは最終的にはそれが最も適した用途に応用されますが、初期段階ではうまく適応できないことが多いということです。本書にはその経緯が詳細に綴られています。
エジソンの例も取り上げられていて、エジソンが、白熱電球を発明したのは1879年ですが、20年後になってもアメリカの一般家庭での電球の普及率はわずか3%だったといわれています。発電所まで作ったエジソンでさえ...
発明の経済効果を生み出すのは、発明そのものではなく、それを実用化するイノベーションである。
もっと厳密に言うと、組織や制度の変革である。と著者は述べているのです。
歯車の一つを改良しても、他の歯車が動かなくては効果がない。他の歯車を動かすのは力仕事となります。
他の歯車が動き始めるまでに時間がかかるのであれば、他の歯車に依存しないビジネスシステムを創り出すことが必要なのでしょう。
動かない歯車があることを想定した上で、取りかかる必要があります。
(その他)
1.あらゆる変化は、誰かをより豊かにし、その分誰かを不幸にするということも
輸送費が安くなって、どこからでもモノを調達できるようになると、労働者に対して経営者は断然優位になります。それは、人はモノほど流動性がないからです。結果として、工場の海外への流出や、派遣などの雇用の問題も、その発端はコンテナかもしれません。
2.貨物量の不均衡は、空のコンテナを送り出す側にその輸送コストの負担を求めるため、輸送コストが割高となる。
帰りのコンテナに積み込む荷がない国、地域はいつまでも不利な交易を強いられて発展が阻害されることになりそうです。
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