「強い社会保障、強い雇用」を標榜する菅首相が登場して半年経過しました。そして、いよいよ消費税の引き上げです。一方、子ども手当、高速道路無料化、農家への戸別補償など財源の裏付けのないバラマキによってさらに歳出を増加させようとしています。
また、社会保障は年金、医療、介護などは積立方式ではなく賦課方式なので、現在の受給者の負担を次の世代に申し送ることになっています。
さらに、与謝野経済財政担当大臣が年金の支給年齢の繰り延べを打ち出し、社会保障をめぐる議論は混乱の極みと言えます。
私たち国民が今まで予定したライフデザインのとおりに生きられるのかが微妙になってきました。
ただ、誰にもわかるのは、現行制度の維持にはもっと金が必要であるということです。問題はそれを誰が負担するのかです。本来は自分で負担するのが当たり前ですが、そうではなかったことが問題を複雑にしています。逃げ切り世代の認識では、賦課方式の各保険料の支払いと国債残高の圧縮は次世代にというのことだったのです。はっきりとは言いませんが、暗黙の了解として。
しかし、どうやらその逃げ切りが難しくなってきたようです。その原因は急速な少子高齢化です。
鈴木 亘氏の「社会保障の不都合な真実」によると、払ってくれるはずの次世代の生産年齢人口が大幅に減少し、負担しきれなくなるであろうというのです。
高齢者(65歳以上)1名を現役(15際〜64歳)何人で支えるかというデータが下記の通りです。
1950年 現役12名
1980年 現役7.5名
2000年 現役4名
2008年 現役3名
2023年 現役2名
2040年 現役1.5名
高齢者の社会保障費(年金+医療+介護)が毎月一人あたり30万円とすると、2023年には現役世代は一人あたり15万円の社会保険料を負担しなければならなくなるようです。現役がみんな海外に脱出してしまいそうな金額ですね。
この計算だけからしても、今の給付水準を維持するのは困難だということがわかります。賦課方式ではいくら国が約束していても次世代が払えなければ給付を受けられないのです。
次に、昨年新設された子ども手当も様々な批判を浴びています。その予算を子育てしやすい環境整備に使った方がよい、特に待機児童の解消など制度面の改善を求める声が多いようです。
ここでも本書に非効率な保育所に関して驚くべきデータが提示されています。
第一に、待機児童数は全国で5万人弱とされていますが、無認可保育所とそれにも入れずに待機している児童数は80万人にも及ぶとされています。働きたくても働けない母親の数は膨大です。そして、子ども手当の1万3千円は、給与収入の1〜2日分にしかならないでしょう。
第二に、認可保育所の運営コストの高さにびっくりしました。千代田区では児童一人あたりなんと月額57万円の費用がかかっているというのです。それに対して保育料は月額2万円程度。その差は公費負担だというのです。保育料も安すぎます。受益者負担を大きくすべきです。
保育所に子どもを預けて母親が稼ぐ収入よりも公費負担が遙かに大きな金額だとすると、社会全体からすると母親が子どもの面倒をみていた方がいいことになります。税金は国民が負担しているのですから。いかに非効率な運営がされているかがわかります。
保育所に関する税金の使われた方は氷山の一角でしょう。
我々の支払っている税金・社会保険料の効率は計算できるのでしょうか?100%以上にならないことは確かです。消費税も社会保険目的税化すると言われていますが、無駄遣いは0にはならないでしょう。
ということは、やはり、自分のお金を自分で積立てて備える自助努力を基本とするのが本来の姿であるということです。次世代につけを回すネズミ講のような仕組みはフェアではありません。
この長年にわたり、こんがらがった社会保険の糸をきれいにまき直すには多くの国民が納得しやすい指針が不可欠です。
強い社会保障と言われるものが政治家と役人の飯の種であってはいけません。
その指針とは自助努力しかないのではないでしょうか。当たり前のことですが
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